あったかいお紅茶を【オリジナル】

人 ページ26

居ない…
嫌な予感は当たり前のように的中した。


「紕閠」

「…やはり、お《隠れ》になったのかと…」



《隠れ》とは、上級の鬼にのみ使うことができる
一種の防衛術だ。


自分や、仲間の身に危険が及んだ、または及ぶ可能性がある時に使う。
使っている者の命が危うくなればなるほど、強く…遠くへと


現実から空間が切り取られる


携帯の電波が届かない範囲まで切り離されたということは
使用者の朱陽の命が危ないということだ。




もちろん、共にいるAも。




「どうされますか?」
紕閠は落ち着いたまま、訊いてきた



………。



―――――――――――――――――――



「もぉ、へーきやで…」
朱陽さんはヘラッと笑う
さっきより顔色は良いけど、あんなに大量に血を流してたのに
へーきなんて言えるのは……


「俺は人やないからなぁ」


聞こえるか聞こえないかのギリギリの声。
そんな…そんな風に言わなくたって…。


「人でも、鬼でも、宇宙人でも…怪我して痛くないなんてこと、絶対ないですから!」
朱陽さんの目をしっかりと見つめる


「Aちゃんはやっぱり面白いなぁ
せやけど、もう血ぃ…止まってんねんで?おかしいやろ…?」
朱陽さんは傷口を見せる
痛々しい傷はもうかさぶたのようになっていた


「ただ、人よりちょっと怪我の治りが早いだけで、朱陽さんは全然おかしくないです!」
人ならとっくに意識を失ってるレベルだとは思う。
私のパーカーは血で真っ赤に染まってるし…

でも、それはおかしいことじゃなくて…。


「良いことじゃないですか!早く治るのって…カッコいいじゃないですか」
そう続けると
朱陽さんは目をぱちくりとさせてから


「わあぁ…、何でそんなん…、カッコええって…!!
Aちゃん優しすぎて傷すぐ治るわ…!」
と朱陽さんは目を潤ませた
こんなので泣かないでよ〜

私が苛めたみたいになっちゃってるから〜!




「…Aちゃん――――」
しばらくして落ち着いた朱陽さんが、こっちを向く

なんだろう?


口を開けて返事をしようとしたとき、



バリバリバリッ!!


ガラスの割れるような音が聞こえた




「えっ…なに…っ?」



朱陽さんの方に寄る。
だって怖いんだもん…





なにもない空間にヒビが入って、割れた。

そこからヌッと手がのびて


また何もないところを壊していく
意味わからないかもしんないけど、私もわからないの!




「《隠れ》を使うとは…」



呆れた様子で隙間から、出てきたのは………

隠れ→←圏外

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