10）黒の時代�� ページ12
二人を引き連れてやって来たのは、Aの執務室兼自室だった。
中に入って、広い部屋にある休憩用のソファーに座るように二人を促す。
Aは机の引き出しから資料を纏めたファイルを数冊取り出し、ソファーの前のテーブルに広げ、向かい合うように座る。
「治、昨日の武器庫荒らしの件は貴方が調べていたわね」
「はい。年代物の銃を持った集団です」
資料を見せると、目を見開く太宰。
「そう！これ！師匠どうして？」
それは昨日防犯カメラに写っていた人物と同じ格好、同じ銃を持った人物の写真だった。
「これが〔ミミック〕よ。この銃は彼らにとって仲間の印。首謀者は〔アンドレ・ジイド〕。欧州地方で軍隊に所属しながらも国に見捨てられた敗残者。時計塔の連中にも追われているみたいね」
資料に目を通す太宰と織田。
「異能者はそれ程いないけど、トップのアンドレ・ジイドは異能者よ。数秒先の未来を見る異能」
「！！俺と同じ・・・？」
その言葉に太宰はハッとした。
「・・・もしかして、森さんは織田作を使おうとした・・・？」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「だから師匠は怒っていたんですね」
「・・・・・・私は部下たちを勝算もない争いに送り出す程落ちぶれてはいないわ」
「Aさん・・・」
「たけど目的がわかれば対処は可能だわ。首領が欲しいのは異能特務課から発行される異能開業許可証。だから、ミミックを使って、特務課を揺らして、焦らして、手に入れる・・・」
ソファーの背凭れに背中をつけ、美しく、妖艶に、試す様に笑う。
「私の弟子と、部下である貴方達なら、出来るでしょう？」
ゾクゾクッと体に鳥肌が立つ。
「えぇ、もちろん」
体が歓喜に震える。
「師匠の期待に沿える結果を出して見せますよ」
「わかった。任せてくれ」
二人の答えを聞き、満足げに笑うA。
「期待しているわ」
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作者名：水琴 | 作成日時：2019年2月15日 1時
