朝の時間 2 ページ8
「あっ…!」
羽風さんにお礼を言う、という名の今朝の目標を思い出したのはちょうど私が綺麗に朝食を平らげた後の事だった。
▢
「お礼…?」
羽風さんは心底不思議そうに呟く。
「はい…昨日は色々ご迷惑を掛けたので…」
私は羽風さんが洗った食器を拭きながらそう呟く。
此処は先程のキッチンらしい部屋。
「うーん、別に何かを求めてやった訳でもないしなぁ…」
羽風さんは唸りながらも手を動かしていて、すぐに手元にあった食器は全て綺麗になっていた。
私はそれを拭きながらその言葉に続けた。
「あの、なんでもいいんです。普段薫さんが煩わしいと思ってる事の代理でもなんでも…」
羽風さんは一応は此処の先輩に当たる人だ。それにお世話になったお礼を返すことぐらいは当たり前だろう。
私が最後の一枚を拭き終わるのと同時に羽風さんは「あ!」と何か閃いたのか口を開いた。
「それじゃあさ、今度からお仕事の間、Aちゃんがお茶とか用意してくれないかな?」
「お茶…ですか?」
何を任されるんだと身構えていた私は余りにも簡単なそれに拍子抜けてしまった。
「うんうん、実はね、ずっと俺がお茶組み係みたいなもんだったからさ、結構大変だったんだよね」
「それに、俺なんかが用意するよりもAちゃんが用意してくれた方が零くんも喜ぶだろうし」と何とも言えない理由も付け足した羽風さんは心底嬉しそうに話していた。
そんなにお茶組みが嫌なものなの…?
私がそう疑問に思いながらも「分かりました」と答えれば羽風さんは更に満面の笑みになった。
「あの、でも、本当に良いんですか?こんな簡単なことで…」
私はてっきり掃除やら書類の始末等を言われるかと思っていたのだが…
「だって、お茶組みはさ、男だったら誰だって可愛い子にしてもらいたいじゃん?」
私の言葉の返答は羽風さんのその言葉と決まりすぎている羽風さんのウィンクと共に返ってきた。
「………そうですね。羽風さんはそういう人だと思ってました」
たった一日しか経っていないがこの人の性格は大体だが予想が着いている。
私が平然にそう答えると、羽風さんは意外そうに此方を見ていた。
「あれ、君って案外冷静なタイプ…?」
「それってどういう意味ですか」
はぁ…と、重い溜め息を着けば、羽風さんに「幸せが逃げちゃうよ」なんて言われる。
『誰のせいだと思ってるんだか…』
横目に羽風さんを見れば楽しそうにこちらを見る羽風さんが目に入ったのだった。
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作者名:miya | 作成日時:2021年1月14日 23時