朝の時間 1 ページ7
薄暗い視界の中、チュンと鳥の囀りが聞こえてくる。
それに促される様に目を開ければ、そこには見慣れた天井ではなく、年季の入った天井があるだけだった。目をぱちくりとさせて、漸く思い出す。
『……あぁ、私、山の中に飛ばされたんだっけ』
▢
ベッドから起き上がれば、ギシッと年季の入った音が鳴る。
「っ、痛い…」
お粗末で古ぼけているだけあって、ふわふわした触感も何も無いそれは硬い板の上で寝ている様なもので、私の身体は既に全身悲鳴を上げていた。
『修道院のベッドが恋しい』
自室のふかふかした清潔な布団を思い出しながら深い溜息を一つ。
さて...と昨日はロクに見れなかった周囲をぐるりと見れば、そこは昨日私に割り振られた部屋で。少しボロい机と椅子に、備え付け程度に置かれた小さな本棚。それにベッドと朝の太陽の陽射しを室内に入れてくれる窓が二つ。ドアの近くにはコートを掛けれる場所もあった。
『住めなくは…ないんだよなぁ…』
ここでやっていくことに多少の不安を覚えながら私は自室を後にする。昨日、長時間に渡り私にベッドを、及び自室を貸してくれていた羽風さんにお礼を言う為に。
▢
「あ、Aちゃんはちゃんと朝起きれる子なんだね」
狭い廊下をキョロキョロ移動していればキッチンらしき場所に立つ羽風さんを発見する。
そして、ちょっと驚き、という様な表情でその一言。
「それってどういう意味ですか…」
ちょっと回復していた朝の清々しい気分もその言葉で一気に削ぎ落とされた。
「おっと、嫌な気分にさせてたらごめんね」
羽風さんは苦笑しながらそう訂正すると「おはよう」と言ってきた。
「おはようございます」
ちょっとムスッとしながらも私は答えた。
「ほんとにごめんって…ほら、ご飯出来てるからコレで機嫌直してくれないかな?」
そう言って羽風さんの目線はキッチンらしい部屋の台の上に向く。そしてその上には美味しいそうに湯気を上げている朝食があった。
「え、羽風さんってご飯作れるんですか!?」
今の私は不機嫌より驚きの方が勝ったのだ。
意外過ぎて驚きの声を上げると、羽風さんはまた苦笑。そして…
「まぁね」
と、少し得意げな笑顔見せる。ちょっとそれにムカッとしたが美味しそうな朝食に私の腹の虫が降参の音を出すのは存外早かった。
「ほらほら、冷めちゃうから早く持ってってね〜」
羽風さんにそう言われて慌てて朝食を持って行こうとする所でふと思った。
『あれ?私何か忘れてない?』
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作者名:miya | 作成日時:2021年1月14日 23時