初日 3 ページ3
「もしかして…あなたがもう1人の…？」
此処に来る前に聞いた「もう1人の問題児」とは彼の事なのだろうか。目の前の“羽風薫”と名乗る男に対し、私は恐る恐る聞いてみる。
「そうだよ、俺も君のことは来る前から聞いてるから安心して？｣
その人は一向に握られない自分の手を引っ込めるとまた優しい笑顔を見せた。
まるで初対面の私に警戒されないように、と取り繕っている様なそんな感じの笑顔。
「そう…ですか…」
彼は言った。「君のことは来る前から聞いている」と。
きっと私がここに来た理由も知っているに違いない。
「私のこと…知ってるんですよね？」
自分にかけてあったシーツをギュッと握りながら尋ねる。自分の手にはうっすらと手汗が滲んでいるだろう。
「…まぁ、少しぐらいはね…｣
そこで、初めてその人は私から視線を逸らした。
表情も先程の笑顔とは程遠い、気まずそうな表情を浮かべていて、私は「やっぱり」と内心落胆する。
「でも、俺別にそういう偏見とかないからさ…」
「無理にそういうこと言わなくても大丈夫ですよ、羽風さん」
私はニコリと微笑んだ。勿論偽りの笑みだけれど。
「私みたいなのは、羽風さんみたいな反応されて当たり前ですから」
「それじゃあ…やっぱり本当なの…？」
今度は彼が恐る恐ると私に尋ねてきた。
私は諦め半分、嫌味半分で返した。
「羽風さんがどう聞いたかは知りませんが、私は“化け物の血が混じっている人外”なのは間違いありませんよ」
至って平然に、私はそう言った。
そう、私は人の子ではない。
私の身体の中には人間ではない“何か”の血が混じっている、らしい…まぁ、人様から言われただけだし、何なら他人が魔法で確認して私が人外って判明した感じだから何とも言えないけれど…
「そっか…」
彼は力無く微笑むだけ。
「やっぱり幾ら神父様でも怖いですか？」
皮肉めいた言い方だけれど、そう言えば大抵の神父はこう答える。
「いいや、全然怖くないよ」
ほら、彼も他と同じような模範解答を口にした。
『あぁ、この人も結局は一緒か…』
少しだけ期待を持ってしまった浅はかな自分に内心苦笑する。
「そうですか…でも、普通の人間にとって私は怖いものと決まってますから…」
「出ていきますね」と言葉を続けようとすると、何かが私の髪に触れた。
それは本当に一瞬の出来事で ＿＿
「嬢ちゃんが人外じゃと…？人間は随分とお粗末な目を持っておるのう…｣
目の前には美しく微笑む男がいた
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作者名：miya | 作成日時：2021年1月14日 23時
