初日 2 ページ2
「…………?」
じょじょに浮上していく意識の中、閉じていた瞼をゆっくりと開けば一筋の光が視界に入ってくる。
『っ……ま、眩しい…』
暗がりから急に眩しい場所に出た様なもんだからその眩しさに眉をひそめていると、それは電気の光だということに気付く。
そして、だんだんとハッキリとする意識の中で次に気付いたのは自分の足元にある温もりだった。
そっと自分の足元を見れば、自分が寝かされているのは簡素なベッドの上で、その温もりは人のものだということが分かった。
足元にいるその人は横顔しか伺えないがとても綺麗な顔立ちの人だった。
その人はベッドに腰を掛け、少し長めの金髪を後ろに流しながら足を組み、本を片手に静かにそこにいる。
少し周りを見渡せば、少しボロい机の上には大量の本や手紙や書類、そしてインクや万年筆。
その隣は飾る程度に置かれた三段ある小ぶりな本棚。
そして、私の足元にいる人は嫌という程見慣れている神父の服を着ている。
『あぁ、もしかしてここは…』
私がこの場所が何処かをある程度予想していると、優しい声が降ってきた。
「あれ、起きたの?」
パタンと本を閉じる音と共にギシッと床が軋む音がして、綺麗な顔が目の前にいた。
「えっ…ちょ!?」
至近距離に顔があるせいで今は来なくていい恥ずかしさがやってくる。
思わずギュッと目を瞑れば、そっとおでこに触れられる感触がした。
「もう熱は下がったみたいだね、よかったよかった」
目を開ければおでこから手を離したその人がニコリと笑顔を見せていた。
「あ、あの、熱って...」
「あれ...?もしかして覚えてない?」
目の前のその人が言うに、道端で眠ってしまった私は既に軽い脱水症状を起こしていたらしく、軽度だが熱も出ていたらしい。
そして、そこを通りかかったこの人がここまで運んでくれた…らしい。
「ち、因みにどちら様でしょうか……?」
神父服を着ている時点でもう神父なのは間違いないが他所の教会の神父だったら色々面倒臭い。
恐る恐るそう聞いてみると、その人は嬉しそうに言った。
「俺の名前は羽風薫。何処にでもいる普通の神父だよ」
普通の神父…?
普通の神父ならこんな山奥のオンボロ教会に用は無いはずだけども…
「あ、それと…」
考え込んでいる私をよそにその人は言葉を続けた。
「今日からAちゃんの同僚にもなるから宜しくね♪」
謎に握手を求めてくる彼に私は一言だけ言った。
「はい??」
誰か現状を説明してくれ。
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作者名:miya | 作成日時:2021年1月14日 23時