1056話 ページ6
✩
｢はぁ、はぁ…｣
夜に星奏館の中庭で練習してると、誰かに声をかけられた
あっ、この声は…！
｢慌てて手袋をするほど、僕は汚らわしいと思われてるんだね…｣
｢た、たまたまです！今ちょうど休もうとしてて！｣
｢休憩するなら、僕の質問に答えてほしい｣
｢な、なんですか？｣
私は警戒してかちこちになりながら、一彩さんの動きをよく観察した
あはは、今から試合でもするみたい…
すると、一彩さんは私に質問した
｢君は兄さんと知り合いなのか？｣
｢…！？ど、どうしてそう思うんですか？｣
｢兄さんを見た時に声を出していたから。それに、あのよく分からない演説を誰よりも傾聴していた｣
｢…｣
よく見てるんだなぁ
私は素直に尊敬してしまった
｢凄いですね…｣
｢いや、僕は凄くないよ。故郷でもよく、馬鹿だと罵られていたからね｣
｢…ち、違います。一彩さんは凄いです｣
誰かの言葉を否定するのって、好きじゃないけど
でも間違ってると思った
一彩さんは凄い
私なんかより全然凄くて、偉大な人だと思う
｢故郷からお兄さんを追いかけてくるなんて、貴方ぐらいじゃないんですか｣
｢そうだね…昔女性の君主を逃したせいで、僕たちは追いかける方法しか残されてなかっただけなんだけど｣
｢…！｣
ひいばあちゃんのことだ…
悲しそうな顔で、一彩さんは言った
｢彼女を血眼になって探すべきだった…なんて皆は言ってるけど、過ぎたことを話しても仕方ないしね｣
｢そ、その…｣
｢…？｣
私は声が震えそうになるのを我慢しながら、一彩さんに質問した
｢その女の人が見つかったら、燐音さんは…もう、連れ戻す必要、ないんですか？｣
｢…そうなるだろうね｣
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作者名：赤月 音 | 作成日時：2021年3月15日 6時
