779話 ページ29
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その日は、変な夢を見た
「はぁ、はあっ…うわっ!?」
草履の紐が切れると、その人は派手に転けた
割と普通に痛そう…
「いったあああぁい…!」
泣きそうになりながら、その人は拗ねたみたいにうずくまって目を瞑った
こんな夜なのに、ずっと走ってたんだ
もう寝る時間だろうに
「…着物?」
「んん…うわっ、人!」
「なんだよその驚き方…因みに、俺は吸血鬼」
「…あんた、厨二病なん?」←
「うるせぇわ!!」
どうやらその人…吸血鬼は、夜のお散歩をしてたらしい
そうして夜な夜な人にかぶりつくんだとか
「じゃあ、なんであんたは私を襲わんの?」
「こんな時代にまだ着物なんか着てて、しかも変な喋り方するお前を襲うほうが怖いっての」
「失敬な!これは今だけ仕方なく着てるんや!あとこの方言知らんとかどこの田舎もんやあんた!」
「田舎もんみたいな喋り方してるお前に言われたかねぇよ!」
初対面とは思えないほど、仲が良さそうだった
強ばってた顔が緩くなってるのが分かる
この綺麗な人の髪色とか目とか…
あの人とそっくり
「ぐずっ…そんで、帰る場所なくして…わああぁん!」
「俺は朔間瑠衣。お前、名前は?」
「?天城、梅花…」
「すげぇよ天城。よくそんな場所から逃げてきたな」
「初めて、人が死ぬとこ見た…血がいっぱいで…」
血って言葉に反応しながらも、その人は慰めてあげた
優しく、ずっと
「吸血鬼は…」
「ん?」
「吸血鬼は、あんたみたいに皆暖かいん?」
「…いいや。冷たいぞ」
その人の目はほんの一瞬だけ、暗くなった
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作者名:赤月 音 | 作成日時:2021年2月28日 19時