341話 ページ41
✩
｢それって、どういう…｣
｢その曲は、王さまが壊れる寸前に苦し紛れで書いてた時のでね｣
｢え！？そ、そうだったんだ…｣
聞き流していた訳じゃないけど、この曲に対する見方が一気に変わった
｢全然そんな風には見えなかった。むしろ楽しそうだな〜…とか思ってたんだけど…｣
｢それは俺と会話してる時に思いついた曲。多分、王さまが描いたなかでそれが最後の楽しい曲だと思う｣
｢そう、なんだ…｣
｢うん。この曲があれば、あの時のセッちゃんを止められたかもしれないのに…｣
瀬名泉さんの知り合い？
私、知ってる気がする
誰だったっけ…
｢誰も助けられなかったこの曲が、Aのおかげで誰かの救いの曲になる瞬間を見たい｣
｢…！｣
｢勝手だけど、そう思っちゃったんだよね｣
｢…そうだったんだね｣
私は頷いた
そしてしっかり見つめ返した
もう恥ずかしがってなんかいられない
｢分かった。りっちゃんの思い、私がしっかり皆に届けたい｣
｢…！｣
｢私が色んなものを全部幸せに変えて、それをおすそ分けしてあげるの！｣
｢…お願いだよ｣
｢うん！｣
ただ家が近いだけで、お友達だったりっちゃんだけど
いつの間にか恋心を抱いてたり、凄く憧れてたり、気づけば大事な存在になってた
私がりっちゃんの夢を叶えるんだ
大好きなりっちゃんを幸せにしたいから
｢りっちゃん！｣
｢どうしたの？｣
｢その、私も大好きなんだけど…りっちゃんの好きは、どんな好き…？｣
｢…ふふっ。こういう好き♪｣
｢ちょっ…！？｣
そこで押し倒すの！？
｢そうじゃなくて！口で言ってよ！じゃないと、そういう関係を望んでるって受け止めるよ…？｣
｢もう、ごめんってば｣
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作者名：赤月 音 | 作成日時：2021年1月25日 9時
