304話 ページ4
✩
｢あっ、あんずちゃんが作ってるの私の専用衣装？｣
｢そうだよ〜！張りきって作ってるから待っててね！｣
｢うん！あんずちゃんありがと〜♪｣
｢んも〜！可愛すぎて困っちゃう〜♪｣
あんずちゃんのお裁縫を眺めてると、丁寧な性格が衣装に現れていた
はあぁ〜、すっごいなぁ…
私大雑把だからこういうの苦手なんだよね
まじまじと見つめていると、後ろからドアを開ける音が聞こえた
｢わぁっ！？び、びっくりしたぁ〜…｣
｢大神。扉は優しく開けるべきだ｣
｢悪かったよアドニス！おいA！こっち来い！｣
｢んん？あっ！わん…じゃなくて…｣
｢大神晃牙だ！！｣
｢反応早っ｣
そうだった、大神さんだった
私を竹刀で頭ぽんぽん叩いてきた人だ…
｢吸血鬼ヤロ〜が呼んでこいってよう｣
｢吸血鬼野郎？りっちゃんのことですか？｣
｢おまっ…まだ知らねぇのか？｣
｢え？｣
私が頭にはてなを付けてると、大神さんは気まずそうに目を逸らした
｢クソッ…俺様は知らねぇからな｣
｢な、何ですか？教えてくださいよ…｣
｢あいつはもう俺様の憧れた朔間先輩じゃねぇんだよ、ただの老いぼれになっちまった｣
｢お、老いぼれ？れいちゃんが？｣
｢あぁそうだよ、本物見てみろ｣
どういうこと？
不思議に思いながら廊下を進んでいくと、軽音部の部室が見えてきた
れいちゃんらしい場所だな〜♪
｢おらっ、起きろ吸血鬼ヤロ〜｣
｢おぉ…ようやく来たようじゃな｣
｢…？？｣
｢久しぶりじゃのう、Aや｣
｢………だ、誰この人？｣
｢知らね｣
大神さんに目を逸らされると、目の前の人はしくしく泣き始めた
｢悲しいのう…我輩じゃよ、朔間零じゃよ…｣
｢…？？｣
｢お前らがあんまりにもちんたら遅せぇもんだから、くたびれちまった可哀想なおじいちゃんじゃよ〜…｣
う、嘘だよね…？
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作者名：赤月 音 | 作成日時：2021年1月25日 9時
