一話 ページ1
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「え?兄さん知らないの?」
「…一彩、それいつの話だ」
「えっと、確か…僕が故郷を出る前だから、もうとっくに兄さんと会っているものだと思ってたよ」
ん?
珍しく、燐音くんが顔を真っ青にして放心状態になって…
「わぶっ!?ちょ、燐音くん!いきなりぶつかってこないでほしいっす!」
「ちょっくら出かけてくるわ。じゃあな」
「え?」
「あっ、兄さん!」
僕にぶつかってきたのに、見向きもしなかったっすね…
いつもと様子が違ったっす
あんなに慌てた燐音くん、いつぶりか…
「僕も心配だな…」
「何かあったんすか?」
「実は、兄さんの許嫁が故郷を出て兄さんを追いかけて来たはずなんだけど…兄さんはどうやらまだ会ってないみたいなんだ」
「えぇ!?色んな意味でびっくりしたっすよ!?」
「…?」
なんでこの子はそんな冷静でいられるのか気になるっすよ…?
燐音くんにそんな人がいたなんて…
「王さまとか何とか、冗談だと思ってたのに…」
「?よく分からないけど、その人のことなら心配いらないよ!」
「え?じゃあ、さっきは誰を心配してたんすか?」
「僕は兄さんの心配をしてたんだ」
今の状況的に、明らかに行方不明になってる燐音くんのお嫁さんのほうが僕は心配になるんすけど…
「姉さんは強いからね!」
「…お姉さん?」
「あぁ…ふふっ。これは僕がそう呼んでるだけで、本当の姉兄ではないんだけどね」
一彩くんにこんなに好かれてるなんて、優しいお姉さんなんでしょうね〜
う〜ん、燐音くんのお嫁さんってどんな人なんすかね?
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作者名:赤月 音 | 作成日時:2022年7月30日 14時