第六話 早く、会いたいよ! ページ7
「……じゃあ、行って来いよ」
リーダーは、朔夜に静かにそう告げた。
小さく頷き、人間の姿に変化する。
朔夜は、自分の通う学校の制服を身にまとった人間の姿で煙から出てきた。
神社の境内を見渡し、ふぅと息を吐く。
周りを見ても、誰一人と朔夜を心配する素振りを見せる狐はいない。
当たり前だよな。オレって、嫌われ者だもんな。
心の中で自分に言い聞かせて、くしゃっと顔をゆがめた。
不思議と、悲しい気持ちにはならなかった。
心配してくれる狐がいなくても、頑張れと声をかけてくれる狐がいなくても、朔夜は少しも寂しく感じなかった。
涙も、もう流れることはなかった。
神社に背を向け、鳥居をくぐる。
他の狐たちは、朔夜から目を逸らし、自分の友人たちと楽しげに話をしていた。
まるで、朔夜という狐なんて存在しないとでも言うように。
仲間から最後まで無視され続けた、朔夜。
しかし、いつものように、朔夜は胸を張って歩みを進めた。
唯一こちらを見ていたリーダーの方も、いっさい振り向くことはしなかった。
「……いつものことじゃないか」
朔夜はつぶやく。
「ていうか、いつもはもっと意地悪で最低な嫌がらせ受けてたよ。あんな荒れてる群れから一か月も抜けられるなんて、むしろ喜ぶべきだよな? ラッキーだよな?」
胸に拳を食いこませ、目を閉じ、俯く。
するとなぜか、人間の通う学校に行くのが、楽しみになってきたのだった。
昨日までは、群れから離れるのが少しだけ嫌だった。
だが、今は違う。
群れから離れるのが嫌だったのは、人間が嫌いだったからだ。
今は――探したい人間がいる。
探したい人間がいるから、怖い感情も、嫌いな感情も、少しも気にならない。
持っていたスクールバッグをブンブンと振り回した。
その場で宙がえりをした。
頬が桜色に染まり、顔がほころんだ。
朔夜の周りを歩く人間の目にはきっと、そんな様子の朔夜のことなど、異常なテンションで怪しくニコニコしている変な人にしか映っていないのだろう。
だが、そんな人間の視線など、少しも気にならない。いつもなら人間に見られるだけでイライラしていた朔夜だというのに。
それくらい、楽しみになってしまっていたのだ。
人間を探し出すのが。
「早く、会いたいよ!」
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
ラッキーカラー
あずきいろ
おみくじ
おみくじ結果は「末凶」でした!
25人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
凍夢(プロフ) - おもしろいです!続きがきになるので続きをお願いします (2018年7月17日 0時) (レス) id: 00e413b96f (このIDを非表示/違反報告)
アナナス - 面白いです、続き待ってます。 (2017年7月4日 16時) (レス) id: c0c87a14c1 (このIDを非表示/違反報告)
闇風ヤク@アニオタ重症(プロフ) - 面白いw更新楽しみにしてる!!☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆ (2014年8月10日 14時) (レス) id: a55c4f8740 (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - なかなかです。続きが気になります頑張って下さい。 (2014年6月22日 18時) (レス) id: baa4070149 (このIDを非表示/違反報告)
ルーナレシア(プロフ) - これ面白すぎる(>∀<)こういうの好きなんですよ〜♪続きが楽しみです!! (2014年6月21日 9時) (レス) id: 107d52b62e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:aru | 作成日時:2014年5月27日 23時