【中堂系】甘く檸檬のようなキスをして２

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サンプルも採取出来たところで、ボックスケースを持ち上げると、背後にいた久部くんのいつもより低い声が聞こえた。




「中堂さん…ですか？」

「え…っと、うんまぁ」


久部くんの射るような視線を注がれ
曖昧に首を縦に振る。


すると久部くんは何も言わず、私の持っているボックスケースを代わりに遺体発見地点へ運んでくれた。


ラボへ着いたのは定時を2時間半も過ぎた夜だった。



「今日はありがとう、久部くん。サンプルの検査は明日にしようか」

「はい…あの、家まで送ります」


「え？いいよ大丈夫」


胸の前で小さく手を振り、一度は遠慮したが
「送らせて下さい」と先程外したばかりのヘルメットを再度渡され、静かに受け取った。




「ボックスケース、ラボに置いてくるんでここで待ってて下さい」


「何から何までありがとう」


ラボの中に入っていく、自分より3歳も年下の彼の背中を見つめ、少し頼もしく感じていた。






中堂Side



定時を過ぎたラボ内は、昼頃の騒がしさに比べ
心地の良い静けさに包まれていた。


オフィスに1人、ソファに座りながら膝に乗せたノートパソコンのキーボードを弾いていた。




「戻りました」


PCから顔を上げると、久部がボックスケース片手に、オフィスに戻ってきた。

…Aの姿はない。



「あいつは？」

「あいつ？」


ボックスケースを自分のデスクに置いた久部が
目線を俺に合わせる。



「…A」

「あぁ、下に居ますよ。俺がこの後送って行こうと思って」


…いつの間にそんな仲になったんだコイツらは。


ふと、久部はAの過去のことやあいつ自身を気にかけていたな、と思った。

久部はよくあいつを目で追ったりもしている。
あいつは全く気づいていないが。




久部は三澄じゃなく、あいつの事が…？


妙な焦りと、疑念の意を込めて久部を見据える。

すると久部も俺を見ていた事に、気がついた。




「何だ」

「中堂さんは、Aさんが好きなんですか？」


その唐突な質問に、思わずキーボードを叩く音が止まる。

心地の良い静けさが、息苦ししいものへと変化する。




「…は、急だな」

「中堂さんの好きと、Aさんの好きは意味が違うと思うんです」


目を細め、眉根を寄せながら
「どういう意味だ？」と威圧するように訊く。





「中堂さんはAさんに昔の恋人を重ねてるだけなんじゃないかって、言ってるんです」




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