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「どいつもこいつも俺の過去の事詮索して、暇なのか?」
ため息混じりに、PCを苛立ちに任せて勢いよく閉じるとソファを立つ。
そして、オフィスの入り口に手をかけると
俺の動きを制止するように、久部がまだ口を開く。
「否定しないんですね」
ギロリと久部に視線を送れば、久部もまた同様に、ジッと俺を睨みつける。
「可哀想だと思いませんか?期待を持たせるような事繰り返して、挙句に自分自身を見てくれてないなんて。
俺は中堂さんに振り回されるAさんを見ているのが辛いんです」
「さっきから何が言いたいんだ?」
意図がはっきりしない久部の言動に、怒りを隠しきれず、静かなオフィスには俺の荒げた声が響く。
「俺は"Aさんが"好きです。だから
____俺が貰ってもいいですか」
宣戦布告とも取れる発言に、背筋にヒヤリとした何かを感じる。
今にも弾けてしまいそうな緊張が走る、数秒あるいは数分の沈黙が痛い。
「…いい訳無いだろ」
やっと絞り出した言葉は、暗いオフィスに
虚しく消えた。
ASide
吐く息が白く、それが何度も暗い夜に溶けていく。
「久部くん遅いな…」
ぽつりと呟いた矢先、ラボの自動ドアが開く。
暗い中から久部くんが、靴の音を鳴らしながら
姿を現した。
どうやら走って戻ってきた様子で、
肩で息をしている。
「すみません。遅くなりました」
「ううん。何かあったの?中堂先生に何か頼まれたとか?」
私が訊くと、久部くんは微笑みながらくるりと背を向ける。
「そんなんじゃ無いです」
軽く首を振る久部くんに、それ以上何か聞くことは無く、家路についた。
翌日、東海林さんと検査室で昨日採取した
川の水の検査を行っていた。
試験管から、ピペットで水を少量だけ吸い取り、それをプレパラートに垂らす。
そして顕微鏡で、それを覗くと丸い形をしたプランクトンを発見した。
「あっ!東海林さん、ありました!」
「どれどれ…」
東海林さんも顕微鏡を覗くと、「本当だ!」と歓喜の声を上げる。
「じゃあ、遺体の肺に残っていた水のプランクトンと川のプランクトンが一致したから…
あの川の水を吸って、死亡した」
私と東海林さんは顔を見合わせて、思わず笑みを浮かべていた。
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青龍 葵(プロフ) - 母親を殺した真犯人は誰なのか…今後の展開、中堂さんと恋人同士になった2人に甘い部分があるのか?とか思いながら更新が待ち遠しいです! (2018年3月20日 6時) (レス) id: 7069733e86 (このIDを非表示/違反報告)
Soll(ソル)(プロフ) - 青龍 葵さん» もう最終回ですね〜終わってしまうのが辛い!小説の方もこれから急展開を迎えますので2人の行く末を見守って頂けたらと思います (2018年3月16日 21時) (レス) id: 55764b7fd6 (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - いよいよ今日でドラマ最終回!結末がどうなるのか気になりますが小説の最後(完結)も気になります。完結まで、まだまだ先かと思いますが無理のない更新で頑張って下さい! (2018年3月16日 17時) (レス) id: 7069733e86 (このIDを非表示/違反報告)
Soll(ソル)(プロフ) - まるさん» ご指摘ありがとうございます。知識の浅い素人の書く文章ですので、これからもそういった点が出てくると思いますが、少しでも楽しんで頂けるよう努力していきます (2018年3月15日 7時) (レス) id: 55764b7fd6 (このIDを非表示/違反報告)
まる - いつも楽しませて頂いてます!差し出がましいことを申しますが、細菌とウイルスは別物です!気にしないで読むつもりだったのですがどうしても気になってしまいコメントしました (2018年3月15日 2時) (レス) id: 8a313f8dce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Soll(ソル) | 作者ホームページ:http://ulog.u.nosv.org/home
作成日時:2018年2月18日 19時