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久部くんがまさかそんな事を言ってくれるなんて思いもよらず、「久部くん…」と名前を呼んでいた。
「ありがとう…」
「いえ。そんな」
「ご飯、いつかラボの皆で一緒に行きたいな」
「"みんな"ですか…」
困ったように微笑みながら、メガネを押し上げる久部くんに疑問符が浮かぶ。
そんな矢先、スマホが東海林さんからの着信を知らせに、軽快な音楽を鳴らす。
「検査結果出たよ!まず電解質濃度は、淡水の数値が高かった。次に水分構成なんだけど、プランクトンの反応が出たの」
「プランクトン?川は流れが早くてプランクトンが生息できないんじゃ…」
私がそう返すと、次に聞こえたのは掠れた声の「バカか」だった。
こんな事を言うのは中堂先生1人だけ。
どうやらラボの方は、通話をスピーカーにでもしているらしい。
「流れの穏やかな川の上流付近なら、付着性のプランクトンが生息してる」
「つまり川の上流まで登れって事ですね」
「じゃないと調べても一致しない」
私はため息混じりに、お礼をして電話を切った。そして久部くんに検査結果の説明をした。
「付着型のプランクトン?」
「川の藻にくっついて流されないようにしてるプランクトンのこと。有名なのがミカヅキモとか」
そんな説明をしながら、川の上流へついに辿り着いた時はもう、薄明の空が広がっていた。
上流へ行けば行くほど、藻が生えた岩が増え
その微量な隙間を縫うように水が流れる。
丁度遊歩道もここで途切れており、やっと水の採取を行える。
遺体発見地点からスタートしていたストップウォッチを止めると、時間は3時間半を切っていた。
これで発見地点から川までの正確な時間を
測る事が出来た。
そして川に手を伸ばし、試験管に水を入れると
オレンジのボックスケースに仕舞う。
「今度は私が聞いてもいい?」
静かな空間に、川のせせらぎだけが聞こえ
その間を繋ぐように言う。
「あ、はい」
「男の人に"お前を誰にも渡したくない"って言われたんだけど、どういう意味だと思う?」
仕事と何ら脈略もない質問に、久部くんは戸惑いながらも答えを絞り出す。
「Aさんが好きって意味なんじゃないですか…?」
「うーん…そうなのかな…」
やっぱり先生の"アレ"は告白と受け取っていいのか…
でもイマイチ腑に落ちないというか、釈然としないのは何故だろう…?
「それ中堂さんに言われたんですか?」
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青龍 葵(プロフ) - 母親を殺した真犯人は誰なのか…今後の展開、中堂さんと恋人同士になった2人に甘い部分があるのか?とか思いながら更新が待ち遠しいです! (2018年3月20日 6時) (レス) id: 7069733e86 (このIDを非表示/違反報告)
Soll(ソル)(プロフ) - 青龍 葵さん» もう最終回ですね〜終わってしまうのが辛い!小説の方もこれから急展開を迎えますので2人の行く末を見守って頂けたらと思います (2018年3月16日 21時) (レス) id: 55764b7fd6 (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - いよいよ今日でドラマ最終回!結末がどうなるのか気になりますが小説の最後(完結)も気になります。完結まで、まだまだ先かと思いますが無理のない更新で頑張って下さい! (2018年3月16日 17時) (レス) id: 7069733e86 (このIDを非表示/違反報告)
Soll(ソル)(プロフ) - まるさん» ご指摘ありがとうございます。知識の浅い素人の書く文章ですので、これからもそういった点が出てくると思いますが、少しでも楽しんで頂けるよう努力していきます (2018年3月15日 7時) (レス) id: 55764b7fd6 (このIDを非表示/違反報告)
まる - いつも楽しませて頂いてます!差し出がましいことを申しますが、細菌とウイルスは別物です!気にしないで読むつもりだったのですがどうしても気になってしまいコメントしました (2018年3月15日 2時) (レス) id: 8a313f8dce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Soll(ソル) | 作者ホームページ:http://ulog.u.nosv.org/home
作成日時:2018年2月18日 19時