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ここも事故が起こる前までは、観光地の一部だったって事か…
その一部を閉鎖する程の事故……
私は引っかかりを感じながらも、管理人の方にお礼を言い、規制線のテープを潜る。
警察が撮った遺体発見時の写真と、現場を交互に見比べる。
鞄から地図を広げて、ペンで現在地に印をつけ、次に川の位置を確認する。
「やっぱり毛利さんの言う通り、溺死する原因になりそうなものは一つも無いね」
辺りを見渡しても、木々が広がっているだけだった。
「とりあえず、この川へ行ってみようか」
「そうですね」
私達は地図を頼りに川を目指す。
そして、歩き出すと同時に、スマホのストップウォッチの開始ボタンを押した。
元々が観光地だった為、遊歩道はまだ残っていた。足元の悪い山道を歩かなくて済みそうだ。
「あの、一つ聞いてもいいですか」
歩き始めて数分、久部くんが遠慮がちに前置きする。
「ん?」
「Aさんは、お父さんが無実だって考えたりしないんですか?自分の父親が、母親を殺したなんて、思いたくないっていうか…」
聞きづらい事を聞いているのを自覚しているのか、久部くんは少し目を泳がせる。
「事件当時、私は母の死を受け入れられずに
記憶障害を起こしたの。
だから、父と母がどんな人だったのか、2人がどうやって出会ったのか、仲が良かったのか悪かったのか、未だに思い出せない。
警察に父が犯人の可能性が高いって言われた時
も、ああ、この人がそうなんだって他人事みたいに思ってた」
私の記憶障害の話に、久部くんは目を丸くする。そして申し訳なさそうに俯く姿を横目に、話を続けた。
「警察にそうだって言われたら、そうなんだって思うしか、記憶の無い私には選択の余地がなかった。
父はそんな事しないって信じきれる程の思い出も確証も無かったから、無実だって考えはしてない。
そんな私に、周りの親族達は薄情な娘だって言ってたけど、私だって家族で温かいご飯を食べたいって思ったりするんだよ?わがままにもね…」
胸の内を話すと、数秒の沈黙が流れた後
久部くんが真剣な眼差しを私に向ける。
「Aさんは、薄情なんかじゃないです。祐くんや、鈴木さん、運ばれてくるご遺体1人1人に寄り添ってる姿を俺は知ってます。
それに、家族で温かいご飯を食べたいって思う事のどこが我儘なんですか?Aさんの願いは真っ当な事だと思います」
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青龍 葵(プロフ) - 母親を殺した真犯人は誰なのか…今後の展開、中堂さんと恋人同士になった2人に甘い部分があるのか?とか思いながら更新が待ち遠しいです! (2018年3月20日 6時) (レス) id: 7069733e86 (このIDを非表示/違反報告)
Soll(ソル)(プロフ) - 青龍 葵さん» もう最終回ですね〜終わってしまうのが辛い!小説の方もこれから急展開を迎えますので2人の行く末を見守って頂けたらと思います (2018年3月16日 21時) (レス) id: 55764b7fd6 (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - いよいよ今日でドラマ最終回!結末がどうなるのか気になりますが小説の最後(完結)も気になります。完結まで、まだまだ先かと思いますが無理のない更新で頑張って下さい! (2018年3月16日 17時) (レス) id: 7069733e86 (このIDを非表示/違反報告)
Soll(ソル)(プロフ) - まるさん» ご指摘ありがとうございます。知識の浅い素人の書く文章ですので、これからもそういった点が出てくると思いますが、少しでも楽しんで頂けるよう努力していきます (2018年3月15日 7時) (レス) id: 55764b7fd6 (このIDを非表示/違反報告)
まる - いつも楽しませて頂いてます!差し出がましいことを申しますが、細菌とウイルスは別物です!気にしないで読むつもりだったのですがどうしても気になってしまいコメントしました (2018年3月15日 2時) (レス) id: 8a313f8dce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Soll(ソル) | 作者ホームページ:http://ulog.u.nosv.org/home
作成日時:2018年2月18日 19時