拾弐 ページ13
目を開けると灯りの消えた知らない部屋だった
自分はキチンと布団の上で寝ており
むくりと身体を起こし周囲を見る
昼間見た着物の男性が壁に背を預け正座のまま眠っていた
時間を確認しようと側に置いてあった自分の鞄を漁る
バッグの中に入っていた時計は4時を指していた
これでは今昼なのか夜中なのかわからない
覚醒しきれていない頭を起こすよう目を擦る
すると、気配に気がついた
『妖の気配がする!しかも今居る部屋全体から…』
困惑と焦燥が入り混じった表情で構える
そんなAに心地よい鈴の音が聞こえた
『ん?どこから?』
<起きた?>
『うわぁ!!』
安倍「ビク!」
目の前の掛け軸から文字が浮き出た事で驚き大声を上げるA
Aの声に肩を震わせ安倍は目を覚ました
安倍「びっくりさせんなよ!
あ゛、起きたのか、大丈夫か?」
『あ、昼間の……安倍さん?
ここどこですか?』
キョトンとした表情で首を傾げ自分より背の高い安倍を見つめる
その様は上目遣いだった
安倍「!///
ここはモノノケ庵
妖怪を祓い終わった後の事覚えてるか?」
『あーえっと、ヒノエに治療して貰って
芦屋さんと安倍さんが自己紹介してて
安倍さんの身体に触った辺りから覚えてないな…
私もしかしてまた倒れたんですか?』
安倍「ご名答。お前何か見たのか?
夢で魘されてたぞ」
安倍が哀しさを含んだ表情でAを見つめる
Aはゆっくり頭に手を置き思い出す
『夢を見てた気がするんだ…ハッキリとは覚えてないけど
目の前で"大切"と思われている"者"が消えゆく
そんな辛い夢……だった気がする』
悲しそうな表情で俯くA
無意識にスカートを握り締めている
安倍はAから視線を外さず、無言で見つめ、聴いていた
『でも、何故か…悲しい筈なのに、辛い筈なのに
最後の方はその子から悲しさはあまり感じなかった
こういうのなんて言うのかな……
この感情が愛って…愛しいって言うのなのかな?
そんなのが伝わってきた』
安倍「!!
(愛…ねぇ…)そうかもな…」
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、 - オリジナルフラグちゃんと外しましょう。違反行為です (2018年8月7日 22時) (レス) id: 7cb5057192 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シェリー | 作成日時:2018年8月7日 22時