オカミサマその2 ページ1
露伴side
「あっ、露伴先生…お疲れ様です」
「あぁA、悪いな待たせちまって」
「いやまあ自分の生活がかかってるわけですから…」
露伴はAに先にホテルに行っておいたらどうかと提案をしたが、Aは「ホテルまでの行先もよくわからないし、ここ(世田谷区)には杜王町にはない店が沢山あるし…」ということで、近くのデパートで待っていることにした。
「楽しかったですよ、ウィンドウショッピング」
もちろん、Aも金を持っている訳では無い(生活費と称して露伴に「貸して」いるのだ)。
露伴は家で待たせている方がAも楽だったろうか、と少し申し訳なく思った。
しかし、例の襲撃の件を忘れられず、なんとなく1人にするのは危険なように感じてこの選択をしたのだ。Aも案外ウィンドウショッピングを楽しめたようだし、大丈夫だろう。
「さて、もうホテルに行くかい?」
「え、いや、露伴先生は街を見なくていいんですか?」
「うーん…別にピンとくるものはそんなに…あ。」
露伴は辺りを見回し何かを思い出したように少し目を見開いた。目線の先には本屋。頭の中には、坂の上誠子のデスクの上に置いてあった領収書。
「……〈オカミサマ〉…だったな…ちょっとそこの本屋に寄ってもいいかい?」
「え?あ、ど、どうぞ」
思い出した単語があった。
出先で興味を惹く対象がない時は、自分の中からそれを引っ張り出せばいい、という理屈だ。意味を断片的に聞いたままになっていた単語。
露伴は「こっくりさん」を聞いてみれば試すし、「呪いの動画」を知ればみる人間だ。知らないものを知るのに、体験する以上の手段はない。
(たしか…「金の取引」。だったらその辺で買い物するだけでいいはずだ。「契約書」ではなく「領収書」でもいい…相手先を「オカミサマ」にする。それだけ…)
思いついたら、早かった。
半ば早歩きのような状態(Aに至ってはほぼ走っているような状態)で、2人は書店に入り、適度に「全く要らないでも無い本」を探した。
ちょうど、作画資料としてよさそうな「人体解剖図 上・下」という高額な本を見つけ、それに加えて「鼻をなくしたゾウさん」とかいう本が目に入り、気になったので購入してみることにした。
「ちょ、露伴先生…!なんで急にそんなでかい出費を…」
(そうか、Aには説明していなかったな…)
「まあ見ててくれ」
「あ…えー…は、い…」
一瞬迷うような素振りを見せてから、Aは頷いた。
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四葉 - 面白いですね 更新待ってます 頑張ってください (2021年3月31日 12時) (レス) id: 0e6ae3a87b (このIDを非表示/違反報告)
粉雪(プロフ) - とても面白かったです!更新待ってます (2020年4月11日 16時) (レス) id: e56b1830f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:林檎凛子 | 作成日時:2020年2月27日 19時