嘘つきの私と最後の一年六時間目 (ページ12)

今日:3 hit、昨日:4 hit、合計:99,445 hit

演劇の時間ページ12

演劇の評価は見事なまでに大ブーイングを食らい、本校舎の生徒の食欲を大幅に無くす事に成功した

その中でも杉野くんの演技は目を見張るものがあった。本人は有希子ちゃんとの共演に力が入ったからと言ってたけど

さて、演劇発表会が終わったとなればいよいよ残すは冬休みの暗殺計画立案に移る訳で、教室内は騒々しい

「混ざらなくていいの?」

窓際で花壇に咲くシンビジウムを眺めていると有希子ちゃんが隣に立った

中心では冬ならではの暗殺を考える皆。そこから外れた私に声をかけるなんて有希子ちゃんは友達を放っておけない性格だ

『うーん…いい。たまには私抜きで考えてもらわないと困るし』

「夏休みの計画立案はAちゃんからだったもんね」

つられて私と同じように花壇を眺める有希子ちゃんが視界にシンピジウムを入れるとくすりと微笑んだ

「最近よく赤色の物を見てるよね」

『…そうなの?』

「うん。ゲームのカラーリングも赤ばっかりだったし」

ちらりと教室内に向いた有希子ちゃんの視線を逆に追いかけると特徴的な赤色を捉える

あ、言われてみればそうかもしれない

「気になってるの?」

『どうだろ。そうかもしれないね』

なんて、本当は気がついている。この感情が、何て呼ばれているのか

でもそれを言葉に吐き出すなんて馬鹿な真似はできない。してはいけない

自虐的な笑みに隣の彼女が私の頭へと手を伸ばした、途端

外からの破壊音と地面が揺れるほどの振動に体ががくんと傾いた
驚いて外を見ると暫くして殺せんせーが地面から姿を表す

何だか不穏な気配を察知して窓を飛び越えて外へと走り出す

有希子ちゃんが続き、その後に皆が続いて殺せんせーのもとへ駆けつけると体育倉庫の天井を突き破って現れたカエデちゃんに驚愕する

「…か…茅野さん」

彼女の首裏に生える2本の黒い触手、彼女もまた触手持ちだったというわけだ

「ごめんね、茅野カエデは本名じゃないの。雪村あぐりの妹、そう言ったらわかるでしょ?人殺し」

演技をやめたカエデちゃんの顔には以前の面影は全く感じられない、険しいものへとなっていた

人殺しと呼ばれた先生はここからではどんな顔をしているのか分からない

それに雪村あぐり、その名前に聞き覚えはある

「明日また殺るよ殺せんせー、場所は直前に連絡する。触手を合わせて確信したよ、必ず殺れる。今の私なら」

近くの木の枝を触手で掴み去っていったカエデちゃんに誰もが愕然とその姿を眺めることしかできなかった