ジョースター家の月 (ページ8)

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6.対面ページ8

総帥に手で制止を促され、ピタリと止まった。見上げると他の部屋とは違い、パスワードを入力しないと入室できない構造になっているようだった。総帥がドアの横に設置されている入力パッドを開き、指をスラスラと滑らせた。
　クリアの合図だろうか。機械音が鳴ったかと思えば、間もなくガチャリと鍵が開く音が聞こえた。総帥がドアノブに手をかけ、ゆっくりと押し込んでいく。
　そっと中に入ると、想像よりも弘大な空間が広がっていた。しかし、広さに相反して家具は利便性の高そうなものが数点しか置かれておらず、持て余しているようにも感じる。
　さらに奥に目をやると、怪しい扉が佇んでいるのが見えた。装飾されている頑丈そうな鉄格子が鈍く光っており、部屋の中でも異質な雰囲気を漂わせている。

　「！？」
　
　Aが不思議そうに見回していると、背後から何かに突き飛ばされた。突然の衝撃に耐えられなかったAは、そのまま床に叩きつけられてしまった。

　「A！！」

　総帥が駆け寄り、Aを起き上がらせる。幸いにも怪我は無かったが、状況を把握できず混乱状態に陥っていた。
　この場で総帥でも反応できない襲撃を仕掛けられるのは、保護されているスタンド使いしか考えられなかった。総帥は上半身を捩って辺りを探ると、すぐ後ろに小さな影が映った。

　「ワン！」

　そこには白と黒のコントラストがなんとも可愛らしいボストンテリアが勇ましく立っていた。普通の犬とは違うカリスマ性が溢れており、只者ではないことがよく分かる。
　Aが呆然とその姿を見ていると、犬はため息をついてAに歩み寄ってきた。焦った総帥がすかさず間に入り、犬に語りかける。

　「イ、イギー！この子はAという。私の娘だ。スタンド使いだが、赤ん坊の頃に一度発現したきりで、自分のスタンドを見たことがない…君さえ良ければAにスタンドを見せてやってくれないか。」
　
　Aは犬がそんな難しいことを理解できるのか疑問だったが、そんな願いは聞かないとばかりにそっぽを向く様子を見ると、相当知能が高いことが窺える。
　イギーと呼ばれた犬は、高級そうな革のソファに軽々と飛び乗りくつろぎ始めた。総帥はやれやれと頭を左右に振った後、Aに向き直りこう続けた。

　「彼はイギー。財団で保護している犬のスタンド使いだ。さっき見たように性格に難ありの元野良犬だ。まったく…これではスタンド発現までの道のりは長そうだな…」

　