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5.とあるスタンド使い ページ7

スタンドとは端的に言えば本人が有する超能力だ。それが具現化し背後霊のようになったものを、いつしかスタンドと呼ばれるようになった。スタンドを持つ人間はスタンド使いと呼ばれ、スタンドはスタンド使いしか見ることができない。
 世界中にいるスタンド使いのうちの一人がAとなるのだが、いかんせんAは自身のスタンドがどのようなものなのか見たことが無い。本当にスタンドがいるのか怪しくなったところで、総帥は何かを思い出したように言った。

 「そういえばAのスタンドはなかなか出てこないな。お前がここに来たばかりの時に一度見たくらいだ。」

 つまり総帥は遠回しに自身がスタンド使いであることを示していたが、Aにとっては細事の範疇を超えておらず、それよりも自分で無意識にスタンドを発現させていたことに驚きを隠せなかった。

 「私、スタンドを出したことがあるの?」

 「それはあるとも。しかし、大きくなってからはさっぱりだな。その様子だと一人でいるときもスタンドを出していないと見た。」

 総帥はふむ、と手を顎の下に添えて何か考え事をするような仕草をして見せた。そして数秒経った後、急に立ち上がり電話の内線で財団員に相談を始めた。

 「あぁ私だ。彼の様子はどうかね。落ち着いていればAに会わせようと思ってな…いや、スタンドについては既に話しているから問題は無い……あぁ、それでは頼んだぞ。」
 
 受話器をそっと置き、一息ついてAに向き直る。

 「A、これから財団で保護しているスタンド使いに会い、実際にスタンドを見てもらう。彼に会えばスタンドを出すヒントを得られるかもしれない。」

 Aは、スタンド発現への道を一歩進めたような気がして思わずステップを踏んでしまうような心持ちだった。これから会う自分以外のスタンド使いに、どんな質問をしようか、どれくらい学べるのか、Aの頭の中はそのことでいっぱいになった。
 そんなAとは正反対に静かに前を歩く総帥は、幾分か緊張しているように見えた。振り返って様子を見る素振りもなかったため表情を伺うことはできなかったが、小さなAでも分かるほどに肩に力が入っていた。
 もしかしてとても凶暴な人物なのかも、とAは張り付く喉を潤すために、何度か唾を飲み込む。総帥に悟られないように、表情を一定に保とうとしたが、上手くいっていたかは分からなかった。
 
 「A、ここで暫く待っていなさい。」

6.対面→←4.父の葛藤



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作者名:みかんどっとこむ | 作成日時:2021年7月27日 0時

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