ジョースター家の月 (ページ4)

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2.ドアの向こう側ページ4

Aが辿り着いたのは、SPW財団の総帥が控える部屋の前。外からでも分かるほどに重々しい雰囲気が漂っており、Aは入室してはいけないと言われているようだった。
　流石にドアを力一杯に開ける勇気はなかったので、偶然に少し空いている隙間から様子を伺うようにした。そっと片目で覗くと、数人の財団員が総裁を囲むように立っている。運良く誰にも気付かれておらず、Aはそのまま聞き耳を立てた。
　
　「…先程話したように、ホリィ様は非常に危険な状態だ。もしものことがないよう、迅速に動いて欲しい。早速だが医療班は日本へ向かう準備をしてくれ。」

　ホリィとは、財団がサポートしているジョースター家の一人である。よく財団へ顔を見せに来るジョセフの愛娘で、日本人の男性ミュージシャンと結婚した後、日本に在住していた筈だ。
　総帥からは、ジョースター家は初代総帥からの付き合いだと教わっていたが、Aは何故そこまで第一に考えるのか不思議でならなかった。今、総帥が話している語気からして、今回は余程の緊急事態なのだろう。

　「また、ミスタージョセフより、スタンド発現の原因であるDIO討伐のため、エジプトに向かわれる意向を示された。」

　スタンドというワードを聞き取ったAは首を傾げた。Aが思い浮かぶスタンドと言えば、何かしらを支えるための道具しかなかったからだ。大きな棒か何かが、絵本の怪獣のように襲ってくることなんてあるのだろうか、とぼんやり考えてしまった。
　しかし、財団員をよく観察してみると、分かりやすく動揺している者が数名いた。スタンドとは何かをしっかりと理解しているのだろう。そして、スタンドについて意図的にAに教えてこなかったところまで推察できた。

　「それでは、各員持ち場へ…それと、スタンドのことはAには…」

　「承知しております、総帥。」

　どうやら話し終わったようで、財団員が部屋を出て行こうと踵を翻そうとしている。未だドアの前にいたAは焦ってどこかに隠れようとしたが、生憎立っていた周辺には死角となるような場所は無かった。
　仕方なくそろりと体を180度に回転させ、もと来た道を戻るようにつま先で移動し始めた。総帥はスタンドのことをAに知られたく無かったようなので、知らんぷりの練習をしなければならないのだろうかと、若干混乱した頭の中で考えがぐるぐると駆け巡る。
　
　その時、Aの背後でドアが開く音がした。