【赤司征十郎】学校を駆け回れ！3【黒子のバスケ】

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教室の中を覗くと、丁度真ん中に地べたに座り込んでいる、僕達に背を向けたAさんが見えた。



しかし、驚くべきは教室の風景。



机はひっくり返り、椅子の足は取れ転がり、教卓は横たわる。
風は吹いていないのに、何故かなびく窓に付けられたぼろぼろのカーテン。



Aさんは、教室の中の乾いた血だまりに向かって笑顔で話しかけていた。



『うん、昨日のテレビ面白かったよね、そうそう、それで確かあのとき……うん、行ってみたいねー、じゃあ今度行こうよーっ』



異様な光景。



「A！」

「お姉ちゃん！」



赤司君とひまりさんが話しかけても無反応。
ただひたすら、目の前の存在しない誰かと喋っている。



そこで気付く。
この得体の知れない恐怖はAさんから感じることに。
空気が重く、薄気味悪いのもAさんが原因かもしれない。



「どうしよう、お姉ちゃんにはひま達が見えてないのかも、今お姉ちゃんが見てるのは……小学校の記憶かもしれない……」

「どうしようって……話しかけるしかないと思う……！A……A……！私だよ、さつき、ねぇ……お願い……気付いて……」

『楽しかったよねー、今度は違う子も誘って行ってみたいね〜』



それでもやっぱり、Aさんは気付かない。
突然立ったかと思ったら、黒板に近付きチョークで落書きをし始めた。
可愛いくまの絵。
隣に誰も居ないのに、隣に向かって笑いながら猫の絵も書き足していく。



が、一瞬静かになると、Aさんの表情から笑顔が消えた。
無表情で、今度は殴り書きのようにチョークを乱暴に黒板に走らせる。



書かれた文字は。



助けて、何で私も死ななかったの
皆死んじゃって、１人ぼっち
何で、私も死にたかった
私にはもう誰も居ない
友達の親から恨まれた
私が犯人だって言われた
犯人だから、生き残れたんだって
犯人じゃない証拠を見せろ
証拠なんて無い



死ねばそれが証拠になる？



『……しねばよかった？』



呟くと、Aさんは黒板に書いた文字を消した。
代わりに小さく、弱々しい文字で



わたしはどこにいるの？
わたしはなにをしているの？
しにたい
たすけて



『……たす、けて……』



Aさんの周りを黒い影が包んでいく。
それに怯えて、必死に影を振り払ったAさんはやがて。
黒い影に包まれながら、うずくまって泣き出した。



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