【赤司征十郎】学校を駆け回れ！3【黒子のバスケ】

109.お別れですね。 ページ16

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お姉ちゃん、お願い。
気付いて、このままじゃ前には進めない。



そんなひまちゃんの声を最後に、私の意識は神桜小学校へ戻る。
私から退くキオク。
引いていく黒い影。
立ったまま、ぼーっと皆を見る。



その時気付いた。
無名ちゃんが一瞬、悲しそうな表情をした事を。



思い出す、思い出した。
気付く、気付いた。



私の目にかかっていた理想という名のフィルターが外れる。



そうだ、私は皆とは知り合いじゃない。
誰も、知り合いなんて居ない。
勝手に、学校の友達だと思い込んでいただけ。



「A！大丈夫か？！」

「大丈夫ですか？！」

『……触らないで！！！』



差しのべられた手を、はたいた。
唖然としている2人も、私は知らない。
誰かを、知らない。
誰？何で私なんかを心配するの？
うざいよ、うざいよ。
ごめんなさい、ごめんなさい。



『……巻き込んで、ごめんなさい。危険な事をさせて、ごめんなさい。お別れだよ、皆』



願う、皆がここから出られるように。
私を置いて、脱出できるように。
今の私なら、それが出来る気がした。



『皆は、ここに居るべきじゃない。皆は、元の世界に帰って幸せにいつも通り暮らすべきだった。こんな薄暗いところ、似合わない。ごめんなさい、ごめんなさい』



願えば、皆が消えていく。
多分元の世界に帰るんだ。



「な、何が、意味が分からないです！Aさん！これは何ですか？！僕達は一体何を」

『帰れるんだよ、元の世界に』

「Aっちは？！Aっちだけ何もなってないじゃないスか！」

『そうだよ、だって私はここに残るから。ごめんね、君達は私の友達なんかじゃなかった、ごめんね。でも大丈夫、元に戻ればここの記憶は全て忘れる。そう願ったから、私の事も忘れるように』



今ここに居ない人も、帰れるように願ったから。



訳が分からない、と何度も叫ぶ黒子君の言葉は無視を貫いた。
最後まで身勝手でごめんなさい。
こんなところ、似合うのは私だけだ。



『さようなら……皆』



そしてふっと、皆は私の前から姿を消した。



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