仕事~56 ページ8
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五虎退に手を引かれて、Aは大広間の前に立った。
五虎退「Aさまを、つ、連れてきました！」
それが合図だったかのように、妻戸が開け放たれる。瞳を輝かせてAを見つめる秋田と、いたずらっ子のような笑みを浮かべた鶴丸と目が合った。
一目見て、全員がそろっていると気づいたAは、何事かと隣の五虎退を見やる。
五「き、今日は、Aさまがここに来てくれた日です…！」
『！！』
三日月「…Aよ」
優しい笑みを含んだ声に顔を上げると、三日月がまっすぐに自分を見ていた。無意識にAは居住まいを正す。
誰からともなく、声がかけられた。
俺たちを、救ってくれて＿＿＿
______見つけてくれて
向き合ってくれて＿＿＿
______手を差しのべてくれて
______この本丸に、来てくれて______
「「「ありがとう!!」」」
闇の中にいた彼らの、長い長い夜を終わらせてくれたのがAだった。あのとき訪れた
言葉の出ない彼女に、乱が近づく。
これっ、と差し出されたものを、Aは目を丸くして見つめた。
『私に…？』
乱「うん！」
骨喰「何か形に残るものをと、考えたんだ」
愛染「乱、すげぇ頑張ったんだぜ！」
それは小さなお守り袋だった。首から下げられるように紐が輪になっている。袋口の部分には二重叶結びがされていて可愛らしい。
くすぐったそうに笑って、乱がAの首にふわりとかけた。
乱「あのね、袋はボクが作ったけど、その紐は皆で編んだんだよ」
『！ これを…？』
首元の紐も指でつまんで確かめる。
淡い色と濃い色が折り重なってできた紐。じっと見つめて、Aはゆっくりと目を見開いた。
綺麗に整っているところ、少しだけねじれているところ、かけ違えたのか凸凹しているところ…
全員が少しずつ編んで作ったのだろう。触れただけで、どこを誰が編んだのかわかるような気がして、Aは目元をなごませた。
『ありがとう。…とても、嬉しい』
どうして彼らは、Aが喜ぶことを知っているのだろう。自分は、まだまだ彼らのことを知らないというのに。
ほんとうの本当に嬉しくて、ふいに目の奥が熱くなって。
それを誤魔化すようにAはくしゃりと笑った。
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作者名：葛の葉 | 作成日時：2019年9月15日 1時
