みえないモノをみる。 【文スト】

友の姿＿＿弐 ページ29

私は苦笑する。



『ただまあ、別に心配じゃないし。彼奴は勝てる賭けしかしないからね』

「……信頼してんだ」

『…………。ああ……、そうか、そういう考え方もあるのか』



信頼。私の彼に対する思いは、そういう言葉で置き換えられるのか。

……何か違くね。いや、確かに彼奴が死ぬ訳無いとかそういうのはあるけど──それは単なる太宰がゴキブリ以上の生命力とせこさを持つからであって。



『……』



まあいいや。そんな言葉で簡単に人間同士の関係が表されるなら、世の中こんなドロドロになってねえ。



『んじゃ私行くわ。帰ったら駄菓子奢ってちょ』

「絶対やだ。──それと、太宰が此れ持ってけって云ってた」



乱歩がん、と片手を突きだす。握られているのは何かの機械で……盗聴器かな？

取り敢えず判んないけど、ジーンズのポケットに突っ込んでおく事にした。



『じゃーねー』

「駄菓子買ってきてねー」

『だが断る！』



後ろから物体が飛んできて私の頭に直撃。彼奴操作(コントロォル)上手過ぎかよ……。










「……凛さん」

『お？ おー、龍ちゃん！ お久し振りぃ！』

「お久し振りです」



相変わらず龍ちゃんは喉……つーか肺？ が悪そうだった。

よく効くのど飴を渡してあげた。いらないです、と云われた。かなし。



「今まで何処に……」

『海外。けっこー筋肉付いたぜ、紛争地域とか云ってたからな』

「そうですか……」



ふと、龍ちゃんの手が少し赤くなっている事に気づく。あれ、この子って肉弾戦じゃ無くて異能で戦うよね。

しかも若干血も着いている。如何したんだ、これは。



『龍ちゃん、これ──』

「ッ……いいんです」



龍ちゃんは手を無意識にか庇い、低い声で呟いた。


自分への、戒めです。と。



『……』



まあ、龍ちゃんが別に良いって云うなら──本人じゃない私は、何も云えない。

そのまま龍ちゃんと別れ、太宰が捕まっているであろう部屋に行った。




まさか友人の一生の黒歴史になるであろう出来事に遭うとは、思いもよらずに。

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