16話 ページ17
「ッあ“〜…痛ったい、たりゃありゃしない…ッゲホ…ひゅ…っ…」
じくじくと増え続ける痛みにやがて博多を抱きしめてた腕の力もだんだんと抜けていく。抜けていってしまう…
目の前が暗くなっていく中、最後に聞こえ、見えたのは私の名前を叫ぶ日本号の姿に大きな目に沢山の涙を溜める博多の顔
そして
明石の刀を落とした音に涙声混じりの叫び声だった
ハッと目を覚ますと障子の隙間から一筋の光が入り込んでいる部屋の中だった。
首だけを動かして部屋の様子を確認すると綺麗に掃除されている。
「い”ッ……!」
体を動かそうにも背中に受けた傷が痛んで動けないモンだから寝っ転がっているしかないのは暇で仕方ない
枕元には冷たい水の入ってる桶に手拭いが浸してあった。
「ふぅ……どうしたもんか…叫ぼうものなら背中の傷が痛むだろうからねェ…」
「な〜にが叫ぼうものなら、だ。あと先考えず突っ走って…ったく…酒じゃ済まないぜ…」
がらりと障子を開けて入ってきたのは新しい水の入った桶を手にした日本号だった。眉間にシワが寄ってるし口調はいつもより荒いし、機嫌が悪い…それに加えてお酒臭いときた。
あぁ、こりゃ……
「日本号、アンタ自棄酒してたろう」
そう問いかければ手拭いを絞っていた日本号の手がピタリと止まった。
「大方アタシの近侍なのに守れなかったうんたらかんたらだろう?
いつも言ってるじゃあないかい、自分を優先しろ、アタシのことは二の次にしろ、って…別に今回の件だってアタシが勝手に走っただけでアンタに非なんか……」
「俺は!!」
チラ、とそちらを見ながら日本号に話せば、急な大声にビクリと肩が跳ねる。ここまで低い声の日本号は…本当に怒っているときの声だった
「言っとくが、俺にとってのアンタは、Aは…掛け替えのない存在だ。二の次にしろだって?お前さんを失ったら、また明日を見ない日々が始まるンだよ…できるわけないだろうが!
博多だって他のヤツらだって…アンタとこの本丸で過ごす幸せな日々を望んでる…それを!希望を持たせて、すぐに絶望に変えさせるんじゃねぇ!
怪我するな、とは言わない、もっと…俺たちに頼れよ…此処での仕事は大変だ。だからこそアンタは体調管理をして怪我にも気をつけて…死なないようにしないといけない。
希望を持たせたのなら、最後まで持たせて貫き通せ」
分かったな、と言っては大きく息を吐いた日本号。私自身も息をするのを忘れるぐらい聞き入ってしまった。
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ガーベラ - はじめまして!課長様、姉貴肌ですね〜。こんなお姉ちゃん欲しかったな〜。続き楽しみにしています!これからも更新頑張ってください! (2020年11月28日 20時) (レス) id: cdc708129e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:病蛟 | 作成日時:2020年7月12日 17時