2432【短編集】

rsn　おかえし ページ5

「はい、これ」


目の前にトン、と置かれる小さい紙袋
クラス委員の居残り中で教室には誰もいない

目の前の人と私を除いて


「なにこれ？緑が私の手伝いしてくれます券？」

「なわけないでしょ。お返しだよ」

「……………………………………………あっ…ホワイトデーか今日」


そういえば上手くいった！って嬉々として渡しに行った覚えがある。
マカロンが上手く出来ると嬉しいよね…


「日付も分からないの？委員長」

「いつも委員長なんて呼ばないでしょ」


日付が分からないんじゃなくてホワイトデーの日を覚えてなかっただけだし…

と聞こえないだろうと高を括って小さく抗議する


「ふ〜ん、僕のお返し興味なかったんだ？」

「え"っ！そ、そういうことでは…………」


聞こえてた。


「じゃあ何？」

「…楽しみだったよ、というかどうなんだろって感じ。返ってくるのかな〜…？って」

「じゃあただただ忘れっぽいだけか」

「そーーーーです！！！！！」


むっとしてそういえば開けてないなと思いプリントのど真ん中に置かれた紙袋に手を伸ばす

「飴だ………可愛い」

「飴って、おばあちゃんみたい」

ふふっと笑う緑
キャンディーだっけ？それともロリポップ？

「わあ、すごい沢山ある……」

「Aはさ、」

「？なに？」

「ホワイトデーのお返しの意味って、知ってる？」


お返しの、意味…………


「マシュマロが嫌いってことしか知らない！」

「なんでそんな変なのを………

　まあ僕はもう帰るから…っていうか買い物行かないといけないし、気になったら後で調べてみてよ」

「あっ…うん分かった」


そういえばひとり暮らしだったなあの人
ひとり暮らしというか親御さんが仕事忙しいんだっけ


「手伝えなくてごめんね、頑張って。また明日」

「また明日〜」


夕日もさしてきた初夏の校舎内
あまりにするっと居なくなるもんだから
いつも通りにクラス委員の仕事をして
いつも通りじゃない紙袋は一旦置いておいて

楽しみは取っておこう派ってわけじゃないけど
調べたのは家に帰ってご飯を食べたあと

部屋に来てから甘いものが食べたいな…なんて思って思い出したお返しの飴

封を開けて緑色のきれいな棒付きキャンディーを口に加えながら調べてみるか〜と携帯を手に取る


「え〜っと…ホワイトデーに…キャンディーを贈ると……あなたが好きです・貴女に好意がありま……す…？？」

はーーーー……と深呼吸のように息を吐き出す

「嘘でしょ………」

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