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44話 ページ45

「…お金よし、ペットボトルよし、…スマホの充電よし、」


雲ひとつない晴天の朝、ついにフェス当日を迎えた

わたしは一つずつ荷物を指差して、全てあることを確認して静かにチャックを閉めた

今日は朝から親がいなくて、私は1人で鍵を閉めて家を出なければならない

そんな時にスマホが鳴って、私は慌てながら指を滑らせた

「も、もしもし!」

「あ、もしもし、高尾??」


もちろん電話の相手は菅原で、付き合ってまだ初々しさが残っている私の心は素直に騒ぎ始める

「実はさ、俺、我慢できなくてお前の最寄りまで迎えに来ちゃった」

ごめん、と声を漏らす彼に私は思わず「えぇ!」と驚いてしまい
「待って待って、もういるの!?」と続けた

「うん、あ、ゆっくり来てくれて本当に大丈夫だから」

そう呟いて、じゃあまた後で、と電話を切ると同時に軽快なメロディが焦った私の耳に響く

「うそ、やば、」


もう家を出ないと、彼を待たせてしまう

そう思った私は荒々しく家の鍵を握り、温めておいたヘアアイロンで前髪を巻いて


「い、いってきます!、」

誰もいないはずの玄関にいつもの癖で叫んで
雑に靴を履いて玄関のドアノブに手をかけた




息を切らして改札にICカードをかざし
それと共に駅に鳴り響いた軽やかな音を背にホームへ走る

急いで階段を降りると、そこには少しお洒落な格好をした菅原が立っていた


「ごめん、遅くなって!」


わたしが息を切らしながらそう声をかけると、彼は振り返って「走ってきたの?」と笑みをこぼす

その笑顔が何故かとても胸に響いて
きっと彼のこういう笑顔を向けられることを望んでいる女の子も少なくないんだろうなと感じてしまった


「俺が勝手に迎えにきただけだからいいんだって」


彼は、本当に優しい

とても優しくて、何度も何度もこの優しさに救われたと思う

同い年には見えない大人っぽさと余裕があって

そんなところが、いつもわたしの胸を締め付ける

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M - 安定の面白さ。黄瀬じゃないのに、、、今まで緑間普通だと思ってたのに、、、今日、りんさんが書いてくれる緑間に惚れましたw更新頑張ってください! (2020年12月6日 14時) (レス) id: 5e52fa6283 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:りん | 作成日時:2020年12月6日 10時

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