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35話 ページ36

緑間side


教師にとって準備を含めとても長かった修学旅行もあっという間に過ぎていき、明日でもう東京へ帰る

そんな中、俺は昨日と同じく男子部屋の見回りを任された

「早く寝るんだぞ」

あと少しで見回りも終わる、そう思いながら点検の終わった部屋にぶっきらぼうに声を出すと、
生徒たちは「はーい」と声を上げた



パタンとドアを閉め、布団に入っていたはずの生徒たちがガサガサと動き出す音を聞き届ける。ここまではどの部屋も変わらないんだな、なんて呆れた声を漏らして

次の部屋をノックした


「はーい」


がちゃ、と音を立ててドアを開けた生徒に向かって「見回りなのだよ」と声をかける

ここまではいつもの流れなのだが、ドアの隙間から覗かせた奴の顔に俺は少し顔を顰めた

我ながら子供かとつっこんでしまいたくなるが、そんな俺の葛藤を他のものに悟らせるものか

「入るぞ」

俺は冷たい言葉を吐いてズカズカと部屋の中へあしをすすめる

奥にいた他の生徒からも「あ!緑間先生じゃん!」と明るい声が聞こえてまだ布団に入っていないと察した俺は、「消灯の時間なのだよ、早く布団に入れ」とぶっきらぼうに吐いた

「いいじゃん〜」と駄々をこねる生徒を叱ろうと口を開いた時、後ろに立っていた菅原が息を吸う音がして


「先生、俺」


菅原の方を向いた時、彼は少し意を決した表情をして



「高尾に告った」


と、その口が確かに動いた



アイツももう、誰かに好意を抱かれるようになったんだと嬉しい反面
俺は2人を素直に応援できるだろうかと頭を悩ませる


「そうか、」


口から出た言葉は呆れるほどに小さく、弱く


「しかし、なぜ俺にその報告を?」

そんな声を悟られないように、俺なりの強がりを続けた


菅原は「高尾が、緑間先生のこと好きだと思ったから」とはっきりと俺に言い切って、ずいっと俺の元へ体を近づける

思わず俺も後退りしたくなったが、彼なりの想いが詰まった告白だったと彼の真剣な眼差しがそう教えてくれて、俺は思わず息を呑んだ



「緑間先生は気がなくてよかったです。先生ライバルだったら勝てねぇっすもん」


少し下を向きながらそう呟いた菅原を、少し黙っていた他の生徒たちが茶化して

急に戻った明るい空気に紛れるように、「余計な心配はするな」と俺は声を漏らして眼鏡を持ち上げた


今日もテレビが無事につくことを確認して、俺はこの空気から逃げるようにその部屋を立ち去った

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M - 安定の面白さ。黄瀬じゃないのに、、、今まで緑間普通だと思ってたのに、、、今日、りんさんが書いてくれる緑間に惚れましたw更新頑張ってください! (2020年12月6日 14時) (レス) id: 5e52fa6283 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:りん | 作成日時:2020年12月6日 10時

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