緑間真太郎は恋にも鈍感3

132話 ページ33

Aside



「んぇ！何！付き合ったの！？」


合コンが終わり、あの日からまた真ちゃんと連絡を取らないまま2週間が過ぎ去ろうとしていた


横でドーナツを嬉しそうに頬張る彼女は、どうやら合コンで出会った彼と付き合うことになったらしい

「えーなんか持ち帰られて、シたら好きになっちゃった」


何も恥ずかしげもなくそうつぶやいてごくんと喉を鳴らした彼女に、呆れてしまいそうになるが
案外女の子なんてそんなものなのかもしれない


「…えぇ、、」

私は20を過ぎてもまだ初めてを経験していなくて
キスだってまだ人生で2回くらいしかしたことがない


「Aがかたいだけだって〜」


好きじゃない人とするというのは一体どういう心理なんだろうと思いながらも
一回したらもう誰と何回しても変わらないという意見もなんとなくわからなくはない気がする

「…うぅーん、、、まぁ幸せならいいんだけど」

私の言葉に、えへへ、と笑った彼女は
そのまま最後の一口を口に放り込んだ


「気持ちかったから脳が勝手に好きって勘違いしちゃった」

ほんと、馬鹿げてると言い放ってやりたいが
美容学生なんてこんなもので

私はもうこんな日常茶飯事には慣れてしまっている

「Aは結局あの日、一人で帰ったの？」

ため息をつこうとしたところ、彼女から突然投げられた質問に
私は何も変わらぬ様子で「うん」と返事をした


「あ〜、彼、Aのこと追いかけてったけど結局だめだったか〜」

「彼？」

この子の言う彼と言うのは、おそらく私にすごく良くしてくれていた彼のことで

実は酔っていたので飛び飛びな記憶の中でなんとなく覚えている程度だった

「Aが酔った時に持ち帰るって言い出してさ〜、勢いで真ちゃんのこと喋っちゃった」


ごめんね、と顔の前で手を合わせた彼女には
この間の合コンの後の話をしていない

私はその場で作った即席笑顔で
「あー、勘違いされちゃうかな、お兄ちゃんみたいなだけなんだけどね、」と自分に言い聞かせるように笑い飛ばした


少し苦しそうに笑う私を彼女は見逃していなかったようで


「ねぇ、」



少し黙ったあと、もう一度口を開いた


「もう、ちゃんと男の人探したら？」

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