95話 ページ46
彼女は色々と薬が並ぶ棚が多い理科準備室で暴れることは許されない、とわかっている様子で
重なっていた手をゆっくりと離す
「…先生?」
少し驚いた様子の彼女を横目に、俺はぱちっと音を立てながら電気をつけた
「あんまり仲良くしてるところを見られては、俺の立場が危ういんでな」
誤魔化すように言葉を濁して、一歩二歩と彼女に近づいていく
ここならきっと、誰に見られることもないだろう
「え、…えっと、」とやはりかなり動揺している様子のAの顔を見て、またいつもの温かい感情が心の中にじわりと広がっていく
何か変な妄想をしているのではないかと気がついた俺は、そんな彼女の目を見つめたままそっとポケットへ手を伸ばした
「実はな、…」
ポケットに眠った小さい箱を取り出すと
重なっていたはずの彼女の視線は俺の手元に釘付けになっていく
そしてそのプレゼントを理解すると、段々と染まっていく頬
「卒業祝い…と、…チョコのお返しと思ってくれ」
ポケットに入るサイズの小さな紙袋と小さな箱
それは彼女のために1ヶ月考え抜いた俺なりのお礼だった
「去年、ちゃんとお礼もできずすまなかった」
「…でも、これって、…え!?」
震える手でゆっくりと俺のお礼を受け取ると、Aは中身を確認するために箱を手に取った
この瞬間の顔をなんども想像したはずなのに
今にも泣き出しそうな彼女の表情は俺の想像を簡単に超えてゆく
「…ネックレス…!!」
彼女は何度も楽しむようにネックレスをジロジロと見て、さらに確認するように俺の顔を見上げた
「色々悩んだんだ、が、この歳の男が変にアクセサリー以外のプレゼントを買う方が恥ずかしくてな」
俺の必死の言い訳も全然耳に届いてない様子の彼女は、ううんううん、と激しく首を振ると
幸せそうに箱を握って俺の顔を見上げて口を開いた
「ありがとうっ、」
男が女性にアクセサリーをプレゼントするという意味をわかっていないはずはないだろう
「これが、俺からの気持ちだ」
いつか、お前に新しい彼氏ができた時
こんなこともあったなって笑って捨てて欲しい
こんなロリコン成人男性に好かれた時期もあったなんて思い出にして欲しい
口からでかかったその言葉は、やっぱり口から出すことはできなかった
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りん(プロフ) - ぱなおさん» メッセージいただいたら書くしかねぇ!ってなりました!この小説はサクッと終わる予定なのでサクッと書きますね笑最後までお楽しみいただけたら嬉しいです! (2021年4月5日 9時) (レス) id: 6b9a318112 (このIDを非表示/違反報告)
ぱなお(プロフ) - りんさん» わー!!返信嬉しいです、更新もありがとうございます( ; ; )いつまでも待ち続けますので無理せずに更新してくださいね!!( ; ; ) (2021年4月5日 0時) (レス) id: a37a5acae8 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - ぱなおさん» ぱなおさんありがとうございます( ; ; )最近リアルが鬼忙しくて投稿が滞っておりますが、終わる気はさらさらありませんので頑張って書きます!!これからもよろしくお願いします( ; ; ) (2021年4月4日 10時) (レス) id: 6b9a318112 (このIDを非表示/違反報告)
ぱなお(プロフ) - 最高すぎて一気読みしました!!続き待ってます( ; ; ) (2021年4月4日 1時) (レス) id: a37a5acae8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りん | 作成日時:2021年3月4日 11時