理由５ ページ30
振り返ると、柄の悪そうな見知らぬ男が5人。
全員、見慣れた制服を着ている。
和也と潤と同じ制服だった。
雅「…えっと…」
男1「兄ちゃん、その犬ころは俺らのなんだよ。」
雅「え、飼い主さん？」
男2「は？ちげぇよ。」
男3「どうでも良いだろ？早く、その犬寄越せよ！」
雅紀は、子犬を強く抱き締めた。
雅「嫌だ。だって、飼い主さんじゃないのに、おかしいでしょ？大切にしてくれそうに見えないし。」
男4「は？！人を外見で判断するなよ。」
雅「ごめんね？俺、基本バカだからさ。君たちが言うこと、理解出来ないんだ。」
男5「…面倒だけど、わかって貰えないなら、しょうがねぇよな？」
男たちが、雅紀との距離を縮める。
雅紀は固く目を閉じ、子犬を守るように抱き締める。
「見つけた！」
背後から聞こえる声に、目を開け振り返る。
そこには、智と翔が息を切らして立っていた。
雅「…智兄？翔ちゃん？」
智「雅紀、無事？」
智が雅紀に駆け寄ろうとすると、男たちが立ちはだかる。
男3「あ？！何だよ、お前は。」
智「…それは、こっちの台詞だよ？俺の弟に、何やろうとしてたの？」
男4「弟？！」
男5「何？このバカの兄貴なんだ？」
男たちは、面白そうに笑った。
智「…バカはどっちだ？」
雅紀は、背筋がゾッとした。
聞いたことのない、低い声。
その声には、威圧感があった。
雅「…智兄？」
智「俺らの弟に、手出そうとすんじゃねぇよ。」
男1「そんなひょろっこい身体で、何が出来るってんだよ？お前らまとめて、相手してやるよ。」
智「…やってみろよ。」
智目掛けて、男が勢いよく拳を突き出す。
しかし、その拳が当たる前に、男は倒れた。
智「…人を外見で判断するなと言ったのは、お前らだろ？」
智が拳を握りしめたまま、挑発的な視線を残り4人に送る。
物怖じするも、何のプライドがそうさせるのか、男達は智を囲んだ。
雅「智兄！…ゴホゴホッ！」
思わず叫んでしまい、また咳が出始めた。
翔「…まずいな。智君、そいつら早くやっちゃって。」
それまで無言でいた翔が、雅紀の方へ向かう。
男達の横を通りすぎようとして、一人の男に腕を捕まれた。
翔「何か用か？」
冷たい声に表情の翔。
いつもの優しい兄達とは、違う雰囲気に少し戸惑いながら「心配かけすぎた…」と、雅紀は少し後悔をした。
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作成日時：2013年1月31日 23時
