理由４ ページ29
１時間後。
今朝から降り続く雨が一向に止む気配を見せないせいか、客も来ないので、店じまいをすることにした二人。
智「ふぅ。今日もお疲れ様。」
翔「まぁ、そんなに働いてないけどね。」
そんな話をしながら、足は自然に雅紀の部屋に向かう。
寝ていると思っている二人は、静かにドアを開けた。
だが、途中から勢い良く開ける。
なぜなら、部屋に雅紀がいないからだ。
翔「…なっ！？雅紀？！」
翔が慌てて部屋を飛び出し、廊下を走って行く。
トイレかと思ってみたが、そこにもいなかった。
『…俺も…学校、行く…』
今朝の雅紀の言葉が、頭を横切る。
翔「まさか…！！」
玄関に行くと、雅紀の靴や傘が無い。
翔「…あいつ、学校に行ったのか？」
智「うん、そうみたい。」
振り返ると、智がいた。
智「いつも通学に使っているカバンもなかった。」
翔「…今朝、学校に行くってずっと言ってたんだよ…。」
智「理由は？」
翔「言わなかった。」
ため息を一つつき、智は車の鍵を持った。
智「ここにいてもしょうがない。とりあえず、学校に行こう。」
二人は、まだ雨が降る外に出た。
雅紀は電車を降りて、駅を出た。
点滴で下げたとは言え、雨のなか歩いていれば、熱はまたすぐにぶり返す。
雅紀の意識は、徐々に危うくなってきていた。
傘を持つ手は冷えきっているのに、頭は熱かった。
すぐ横を通る車の音や街のざわめきが、遠くに聞こえる。
雅「あと…ちょっと…。ゲホゲホッゲホッ！」
学校が見えてくると、雅紀は溜め息をついて路地に入った。
行き止まりまで行くと、薄汚い段ボール箱の前が見える。
雅紀は箱の前でしゃがむと、蓋を開けた。
ワンワン！
中には、泥まみれの子犬が一匹いた。
嬉しそうに尻尾を振る姿を見て、雅紀も微笑んだ。
雅「遅くなってごめんね？ゴホゴホッ…」
鞄から皿と牛乳パックを取り出し、皿に注ぐと、子犬に差し出した。
一心不乱に皿を舐める子犬の背を、優しく撫でる。
雅「ふふっ…そんなに慌てなくても、大丈夫だよ？…あれ？こんなとこに傷？」
撫でていて、気が付いた。
子犬の足に傷があることを。
牛乳を飲み終えた子犬を抱き上げ、傷の具合を見る。
「見つけた。」
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お読みいただき、ありがとうございます。
さて、次のページから少し暴力シーンが出てきます。
そんな大した事じゃないと思ってはいますが、苦手な方は気をつけて下さいね。
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作成日時：2013年1月31日 23時
