親心 ページ12
雅「…俺、本当に良いの？いつも智兄や翔兄に、心配や迷惑かけまくってない？」
そういうことかと、智は心の中で呟いた。
雅紀が気にしているのは、身体の弱い自分をいつも心配してくれている兄達。
正直な話、体調を崩しやすい雅紀は、兄や従兄の店以外で働くことを躊躇っていた。
かといって、自分が店長になると、余計周囲に迷惑をかけそうで嫌だった。
しかし、そこで兄や従兄に頼ってしまうのも、気が惹ける。
本当は、ずっと思っていた。
兄達と一緒に店をやれたらと。
でも、兄達の足をひっぱってしまいそうで怖いのも、事実。
雅紀がずっと言えなかった本音。
中々言い出せなかったことを、舞い散る桜の中でなら、素直に言えそうな気がした。
桜の力を借りて言えた本音。
それを、兄は優しく受け止めた。
俯く雅紀の頭を、智は優しく撫で付ける。
智「ねぇ、雅紀。おいらも翔も、迷惑だなんて思ったことないよ。」
雅「…でも。」
智「まぁ、そりゃぁ心配はするけどさ。大切な弟が苦しい思いしているのに、心配しないわけないでしょ。」
雅「…俺、弱いから…すぐに休んだりするかもしれない…店、改築してくれたって、なかなか出られない日も続くかもしれない。」
智「うん、良いんだよ。それで。雅紀は雅紀のペースで頑張れば良いんだよ。無理しなくて、良いんだよ。だから、おいら達とお店やるんでしょ？」
雅「…うん、グスッ…」
自分より背の高い弟が、今は自分より小さく見える。
智は、雅紀の背中に手を回し、抱きしめた。
いつまでも子どもだと思っていたのに、いつの間にこんなに大きくなったのか。
嬉しいような、淋しいような。
子どもの成長を願う親って、きっとこんな気持ちなのかなぁと、智はふと思った。
智「…まだまだ、おいら達に甘えてて良いんだよ？」
雅「でもっ！でもっ！！もう、子どもじゃないんだし…。」
抱きしめる手に力を込める。
智「…そんな淋しいこと、言わないでよ…。急に一人立ちなんてされたら、おいら淋しいよ。」
本当だよ？と、切なそうに智は笑った。
智「ほら、あまり泣くと、翔や双子が心配する。」
一生懸命泣き止もうとして、袖で顔を拭く雅紀の涙を、智が指で拭う。
智「さ、帰ろう。皆で桜餅食べようね。」
手にしている袋が、風に揺れてカサカサと音をたてた。
雅「うん。ほうじ茶が良いな。」
智「熱めでね。」
風が吹く桜並木を、２人並んで歩いて帰った。
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作成日時：2013年1月31日 23時
