夕焼け小焼け【緑さんメイン】 (ページ11)

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将来の夢ページ11

4月。満開の桜の下に、二人はいた。
川沿いの桜並木は、ちょっとした名所になっていて、花見客で賑わっている。
散歩がてら行った近所の和菓子屋の、帰りだった。

桜の花が風に舞い、ひらひらと散る。
雅紀が手を出すと、花びらが舞い降りる。

雅「あ！智兄！見てみて！」
智「雅紀、すげぇなぁ。何か、良いことあるかもな。」
雅「良いこと？何だろ、楽しみ。」
智「きっと、いっぱいあるよ。」
雅「うん！」

向日葵のように笑う雅紀に、智は微笑んだ。
小さな頃から身体が弱い弟。
仕事で忙しかった両親に代わり、夜通し看病をしたこともあった。
そんな弟に背を抜かされたのは、いつだったか。

智「おっきくなったねぇ…」

思わず出た声に、雅紀が振り向く。

雅「どしたの？おじいちゃんみたいだよ？」
智「あぁ、気分はそうかも。」

しみじみとした、でもどこか暖かい気持ちに、智は桜を見上げる。

智「…雅紀、大きくなったら何になりたい？」

来年、成人式を迎える男にかける言葉じゃないが、智にとっては8歳も離れた弟。
だからか、聞かれた本人も真面目に答えた。

雅「…俺、手作りのカフェやりたい。」
智「そか。」
雅「智兄と翔兄と一緒にやりたい。パン屋さんにカフェ併設してね、パンと簡単なサラダとコーヒーと、みたいなさ。サラダの野菜は、庭で育てたり？俺、今野菜やスパイスとか、そういうのも勉強してんだ。なんつうの？ハンドメイドのカフェ？…って、俺の夢。智兄達に相談してないけどさ。」
智「んじゃ、その夢実現の為に、店改築すっか。」

驚いた雅紀は、兄の顔を見つめた。

雅「…智兄…？」
智「ん？雅紀の夢、良いんじゃない？おいらもカフェに出すパンとか作ってみたいし、お客さんの感想が間近で聞けるって、嬉しい。きっと、翔も賛成するんじゃないかな。」
雅「…え、本当に良いの？」
智「へ？嫌なの？」

首を横に思いっきり振って、否定した。

雅「嫌なわけないじゃん！！…ただ。」

雅紀は、突然口を噤んで俯いた。

智「…ただ？」

促すように、智が優しく声をかける。