夕焼け小焼け【緑さんメイン】 (ページ33)

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理由８ページ33

雅紀を病院に連れてきてから、既に三日が経過していた。
熱は、ほぼ下がっており、念のためにもう一日入院することになった。

今朝、目を覚ました雅紀は、兄二人に説教されている。

翔「熱あるやつが、何で外に行くんだ！」
智「出掛ける時は、ちゃんと言わないと。ダメでしょ？」
雅「…はい。」

ベッドの横に立って、厳しく言う翔。
その横でベッドに腰掛け、柔らかく言う智。
二人の兄の前で、ベッドの上に正座して、小さくなる雅紀。

翔「何もなかったから、良かったようなものの！」
智「あぁいう薄暗い路地には、入っちゃダメだよ？」
翔「あの時俺らが間に合わなかったら、風邪だけで済まされなかったんだぞ！？」
智「子犬を守ったのは、偉いけど。恐かったのに、頑張ったね。」
翔「風邪が悪化したら、大変なのはお前だろ？！」
雅「…はい。」

まさに、飴と鞭。

翔智「分かった？」
雅「…はぃ。ごめんなさい…。」

項垂れた雅紀の頭を、智が優しく撫でる。

智「起きたばっかなのに、グダグダ言ってごめんね？」

智君、甘い！と翔が隣で叫んでいるが、気にせず智は続けた。

智「あの子犬なら、今頃和と潤が世話してくれてるよ。」

良かった…、と雅紀が呟く。

雅「ごめんなさい、智兄、翔ちゃん…どうしても、ほっとけなくて…」
智「…分かってる。雅紀は優しい子だから。」

雅紀は、顔を少しあげて智を見る。

智「今は、子犬は双子に任せよう？雅紀は身体を治すのが、優先。」
翔「…少し横になれ。」

翔が雅紀を横にさせる。

翔「脱走しないように、今日は俺がずっと一緒にいてやるから。」

ぶっきらぼうな口調には、心配が見え隠れしているのが分かり、智は微笑んだ。

雅「え！？いいよ！子どもじゃないし、それにお店は？」
智「大丈夫。和也と潤が手伝ってくれるから。」
翔「…ったく。病人はそんなの気にするな。自分のことを考えてろ。」
雅「だって…。」

小さくため息をついた翔が、困ったように笑いながら、雅紀の髪をクシャと撫でる。

翔「良いんだよ。お前が何歳になろうが、俺達にとってお前はまだまだ手がかかる弟なんだから。」
智「雅紀。翔はね、雅紀に甘えてほしいんだよ？本当に心配してたんだから…今日は言うこと聞いてあげて？ね？」
翔「ちょっ！さ、智君！？」

一気に慌て始める翔を、智は微笑んで見る。
雅紀は路地裏での兄達の姿を思いだすが、まるで別人のように思えた。