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作戦はすんなりと成功し、俺はAと二人きりになる。
三郎と逢引してたのか、町を巡ったのか、買い物はしたのか、団子は食べたのか、この口紅はなんなのか、全部聞きたい。
でもまずは彼女を補給したい。そうそう出会えないから、出会ったときは些細なボディータッチや会話で彼女を感じる。正直、毎日会いたい。
恥も忘れて抱きつくと、薄っすら香油の匂いがする。遊女屋で使っているものを薄めているのだろうか、甘ったるいがまだマシに思える。
俺の名前を呼ぶ彼女に、不機嫌を伝えるように返事をする。
苦しめているのは申し訳ないが、離したくない。俺がどれだけ焦っているか知ってるのか、この子は。
三郎とは何もなくて、ただの尾行に付き合わされただけだった。
(なんだ、よかったぁ...ちょっと先走っちゃった)
恥ずかしくなってしやがんでいると、しばし沈黙が続く。
顔に貼り付けた指の隙間から彼女の顔を伺うと、赤くなった頬を扇いでいた。
Aは恋路について何も言ってこない。
忍者の三禁を守れとか、告白の仕方が最悪だとか、指摘されるべき点は沢山ある。
それでも俺を知ろうとしてくれるのは、期待して、いいのか?
『尾浜さん、目を...瞑っていただけますか?』
「は、はい...」
返事が裏返ったが、素直に目を瞑る。
(このお強請りは、ま、まさか...接吻されちゃうんですかぁ!?)
元来、女性の方が男性より多いため、恋仲になるには女性から許しをもらうことが一般的で、男は恋文を送って媚びることしかできない。
でも俺はそれをすっ飛ばして、堂々とはしていなくとも口頭で伝えた。それに彼女は、答えるのか?こんな男に?
じっと待っていると、額に痛みが走った。
「い゙っ!?」
何事かと思って目を開けると、デコピンの構えをした彼女がいた。
『...私は、なぜ自由にあなたに会えないのか、分かりません。でも、自分から全て知りに行くとは思わないでください。
その順番とやらが来たら、あなたから教えてもらいますからね!』
べっ、と子供らしく下を出して、彼女は街へ戻った。いつも大人びている彼女には似合わない。が、胸を弾ませるものがあった。
「あ、あは...早く順番、回ってこないかな...」
形勢逆転したときの彼女は、あんな生意気な顔が俺の前でできるだろうか。
((知りたいことが、多すぎる))
二人はそう思った。
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もち米マン(プロフ) - コメント失礼します!お話し面白くてスラスラ読めます!19,20話が抜けていますがミスでしょうか?確認お願いいたします(..) (9月9日 21時) (レス) id: 483e70a4e0 (このIDを非表示/違反報告)
ねう。(プロフ) - 待って最推し、、めちゃめちゃ心臓にキて好きです…最高に私得すぎる。。更新楽しみにしてます、! (8月24日 3時) (レス) @page12 id: dee5bda7f0 (このIDを非表示/違反報告)
勘ちゃんに食べられたいお菓子🍡 - 更新頑張って下さい!!!!!正直に言えば夢主ちゃん以外のオリキャラがいなければええな〜って思いました!まぁ、それを無視して読んでます。アンチではないのでご安心を!!!!!!これからも暇さえあれば読んどきます! (2023年2月12日 0時) (レス) @page34 id: 5ad601e96f (このIDを非表示/違反報告)
シュモくん(プロフ) - 小桜さんすみません( > < *)՞՞確認不足でした!ありがとうございます。 (2022年11月5日 19時) (レス) @page23 id: b925ba0735 (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - 19ページの数馬くんの説明(?)のところ、保健が保険になってます。一応、お伝えしときます! (2022年10月16日 23時) (レス) @page19 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シュモ | 作成日時:2022年8月10日 15時