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今日は学校が無いので部屋で本を読んでいると、襖を隔てた向こうから声が掛かった。
「お嬢さん、旦那様から預かり物です。」
京治だった。今日も店の手伝いをしていたのだろうか。
私が襖を開けるなり、私に紙で包まれたものを手渡した。
「これは何？」
「はぁ、開けてみたらどうですか？」
廊下から部屋に入って来ようとしない京治。
それでも、退かないということは中身が気になっているのだろう。
「そんなとこに居ないで、入っていいのに。」
私が言うと、京治は待っていたかのように立ち上がり部屋に足を入れた。
そして私の隣に腰を下ろすと、真剣な顔して言った。
「中身、当ててもいいですか？」
「ええ、どうぞ。」
すると、京治は素っ頓狂なことを口にした。
全く、真剣な顔はなんだったのか？と疑いたくもなるようなこと。
「きっと、シロのご飯ですね。」
シロとは家で飼っている柴犬のことだ。
「京治、貴方ふざけているのね。」
「そうですね。少し疲れているかもしれません。」
ふぅと小さく溜息をつく、私を京治は横目で見て少しだけ笑う。
「早く開けてくださいよ。中身が気になる。」
「あのねぇ、これは私に渡されたものなのよ。」
急かす京治を窘めて、紙に手を掛ける。
「わぁ、素敵。」
「これ、今日入った物ですね。」
紙に包まれていたのは、勿忘草色の着物。
「もらって良いのかしら。」
「そのために、渡されたのでしょう。」
本当に綺麗な着物だった。
帯は黄金色の物が良いかもしれない。
「京治、着てみるから廊下で待っていて。」
「見せてくれるんですか？」
「えぇ、一番に見せたいわ。」
すると、京治は黙って廊下に出ていった。
何だかこんなにも京治と話したのは、久しぶりな気がした。
まるで幼かったあの日のように。
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作者名：晴 | 作成日時：2016年1月16日 22時
