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tune.5 ページ5

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千田Aは、3年前おれと同時に入隊してからというもの一度も隊を組んだことがない。
今の彼女の実力を見れば引く手あまただろうが、Aはそれらを全て断っていた。本人は、「一人の方が気楽だし、個人の訓練に時間を費やせる」ということだ。

上層部からしてみれば早く隊を組ませてA級に上げたいところだが、如何せん本人がこのザマだ。そのため何ヶ月か前から数回に渡り呼び出して説得しているらしい。

らしい、というのは全てAから聞いたことだからだ。給料が上がるとか、トリガーのカスタムによってさらに戦闘の幅を広げられるとか、米屋や木虎の例までも出されたそうだ。必死である。


───千田Aは、トリオンが少ない。
それこそ、数値で言えば米屋や木虎と同じ「4」である。それでも、彼女は血の滲むような努力によって着実に実力を伸ばしていき、その結果攻撃手ランク10位の座についた。

Aは自分を「凡才」と評するが、おれ達から見れば彼女は「努力の天才」である。腐ることなく自分の欠点をひたすら探して工夫や訓練でそれを埋める。こんなこと並大抵の人間ができることではない。


「お、それまさかC級の資料? ちょっと見せて」

米屋の声で我に返る。
空いている椅子を持ってきて座ったAは、「うーん、多分だめ」と米屋から資料を遠ざけた。

「えー何で。別によくね」

「だめ。これC級の資料じゃないから」

「え、違うの?」と声を上げる。
その中から隊員を見繕えという話ではなかったのか。
するとAは苦笑してから声のトーンを落とし、おれ達3人にのみ聞こえるように言った。「個別任務、入れられた」

「‥‥あ〜〜、その手に出たか」
これは確かに苦笑するしかないだろう。

「え、なに? どういうこと?」
緑川と米屋が頭上に「?」マークを飛ばしているため、Aが上層部の目論見を簡単に説明した。2人は彼女に憐れみの目を向ける。

「先輩さ、もう観念して隊組んじゃった方がいいんじゃないの? 毎回呼び出される方が疲れない?」

「確かにそれは一理あるけど、なんか負けたみたいで嫌」

「もう意地の張り合いになってんじゃねーか、それ」

米屋がすかさず突っ込むと、Aは疲れたように「否定はしない」と呟いた。


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夏向(プロフ) - りんさん» コメントありがとうございます。めちゃくちゃ原動力になります!! (2021年5月16日 22時) (レス) id: d3650b90b8 (このIDを非表示/違反報告)
夏向(プロフ) - れいゆふさん» ありがとうございます。そういったコメントを頂けると作者冥利に尽きます…!! (2021年5月16日 22時) (レス) id: d3650b90b8 (このIDを非表示/違反報告)
りん - とても面白かったです!続きがとても楽しみです! (2021年5月16日 15時) (レス) id: 5a0e3d3105 (このIDを非表示/違反報告)
れいゆふ(プロフ) - めっちゃ好きです!更新楽しみにしております! (2021年5月12日 3時) (レス) id: e48528e707 (このIDを非表示/違反報告)
夏向(プロフ) - 星宙*°さん» ありがとうございます。感想めちゃくちゃ嬉しいです…!のんびり更新の上どこまで続くかわかりませんが、最後までお付き合い頂ければ幸いです^^ (2021年5月11日 22時) (レス) id: fd39a6918d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夏向 | 作成日時:2021年3月31日 16時

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