tune.24 ページ24
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遠慮せずに選びなよ、と言うので、仕方なく緑茶のボタンを押す。水だとなんだか彼が機嫌を損ねそうだったし、ジュースだと本当に遠慮してなさそうで嫌だ、という葛藤の結果の折衷案である。
「渋いの選ぶねぇ」
「そうですか?」
「きみにはレモンティーとか似合いそうだね」
「はあ」
「ところで名前なんていうの?」
こないだ遭遇したナンパと決定的に違うのは、距離のとり方だろうか。ぐいぐい来る割には、物理的な距離は一定を保っている。試しに一歩離れてみるが、彼は無理に近づいては来なかった。
「新しくプロデュース科に来たんだっけ?」
「はい」
「なるほど。癒やし系のあんずちゃんとはまた系統の違った美人って感じかな」
(なるほどとは‥‥?)
どことなく話が噛み合ってないことに困惑するが、別に噛み合わせなくてもいいか、と思い直す。
HRが始まる5分前のチャイムが鳴り、じゃあ私はこれで、とそそくさとその場を離れる。「次会ったときは名前教えてね〜」という声は、なんとなく聞こえないふりをした。
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結局凛月くんに頼まれたものを渡せたのはHRが終わってからだった。
「もー‥‥遅い」と言われたものの、炭酸を飲み始めると少し機嫌が治った。相変わらず眠そうではあるが。
いざというとき、日中はずっと眠そうにしている彼を安全に避難させるための方法を考えておかねばならない。学校に来るのも衣更くんに頼っているとなると、走るなんて彼にとっては以ての外だろう。
(命の危険に陥れば、さすがに走るかな)
朔間兄弟は日光に弱い、ということが思いの外ネックになる。体質的にはどうしようもないが、必要ならば私が彼を抱えて避難させることも視野に入れたほうがいいだろう。
「難しい顔してんな、千田」
「衣更くん。‥‥まぁ、色々と懸念事項が、ね」
「俺にも頼れよ? できることなら何でもやるし」
「凛月くんを毎日学校に連れてきてもらってるしな‥‥」
レオさん同様、護衛するには学校に来てもらわねば困る。凛月くんを家からここまで引っ張ってくるのはかなり苦労するだろうから、衣更くんにはこれ以上負担をかけない方がいい気がする。ただでさえ彼はいろんなことの板挟みになることが多いらしいから。
「な〜に‥‥? 俺を差し置いてま〜くんと内緒話するなんて、いい度胸だねぇ‥‥」
「ちょ、凛月! 抱きつくなって」
「何の話してたのか教えてくれれば、離してあげなくもな〜い」
‥‥本当に、凛月くんをどうやって動かそうか。
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夏向(プロフ) - りんさん» コメントありがとうございます。めちゃくちゃ原動力になります!! (2021年5月16日 22時) (レス) id: d3650b90b8 (このIDを非表示/違反報告)
夏向(プロフ) - れいゆふさん» ありがとうございます。そういったコメントを頂けると作者冥利に尽きます…!! (2021年5月16日 22時) (レス) id: d3650b90b8 (このIDを非表示/違反報告)
りん - とても面白かったです!続きがとても楽しみです! (2021年5月16日 15時) (レス) id: 5a0e3d3105 (このIDを非表示/違反報告)
れいゆふ(プロフ) - めっちゃ好きです!更新楽しみにしております! (2021年5月12日 3時) (レス) id: e48528e707 (このIDを非表示/違反報告)
夏向(プロフ) - 星宙*°さん» ありがとうございます。感想めちゃくちゃ嬉しいです…!のんびり更新の上どこまで続くかわかりませんが、最後までお付き合い頂ければ幸いです^^ (2021年5月11日 22時) (レス) id: fd39a6918d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏向 | 作成日時:2021年3月31日 16時