才能 ページ2
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「やっぱ才能あるやつは違うのかね」
「それをあんたが言うの、天才射手サマ」
「それほどでも〜」
私が芸能界で活動する一方、公平は公平でボーダーに所属して近界民と戦っている。
A級1位の射手。公平の攻撃はド派手でありながら流星群みたいで綺麗なのだと、彼の友人である米屋は言っていた。
「天才の双子とか絶対話題になると思うんだよな〜。もういっそ公表すれば？」
「そしたら私がめんどくさくなるからイヤ」
面倒事は嫌いなのだ。なぜって？ 面倒だからである。
ただでさえ世間は噂話が──それも不幸話や「裏の顔」みたいなネタが大好きなのだ。下手なことを喋れば上手いように切り取られ、面白おかしく騒ぎ立てられるのは目に見えている。
「あんたも気を付けてよ」
「余計なこと避けたいなら副業やめりゃいいのに。あっちのがむしろいい話のタネだろ」
「それは嫌かなぁ。あれはあれで楽しいから」
「そのうち働きすぎて倒れんなよ」
それはこちらのセリフだ、と思う。
ボーダーは学生が多いため、教育機関と連携してボーダーと学業の両立を最大限可能にしている──というのが、公式発表である。
しかし、未成年でありながら深夜・早朝任務は当たり前。年に数回は1週間以上任務で家を空ける。本人は「合宿訓練」と言っているが、米屋は参加していないことを合わせて考えると多分家族にも言えない重要機密なのだろう。
それが何なのかは詮索していない。しかし初めて「それ」に参加し無事帰ってきたとき、しばらく公平は部屋に引きこもって、食事もまともに摂っていなかった。ようやく顔を見せたと思ったら、目元にくっきりと隈を刻んでいて。
その数日後に隊長である太刀川さんが、公平と2人で話がしたいと訪ねてきた。
おかげでさらに数日後にはいつも通りの彼を見られたのだが、この一連の流れで公平が「それ」で何をしたのか、薄々勘づいた。おぼろげにだが、「それ」の内容も。
そして公平も、私が勘づいたことに勘づいた。
軽蔑するか、と尋ねられた。「ここで肯定しても否定しても、あんたはまた行くんでしょ」と答えれば、アイツは面食らったように目を瞬かせて。
その後に浮かべた泣き出しそうな笑顔を、今でもよく覚えている。
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作者名：夏向 | 作成日時：2020年9月17日 21時
