【国見英】つめこみ短編集 (ページ1)

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バレンタインページ1

「ねえ」
休み時間、頬杖をつき無表情のままこちらに手のひらを突き出してくる隣の席の彼。
「え、何？え？」
突然のことでこちらが戸惑っていると、そんな様子を見て彼はふっと笑う。
「何か忘れてない？」
「えー、急にそんなこと言われても……」
国見くんとは隣の席になり、授業でペアワーク等をするうちに少しずつ話すようになった。と言っても、彼についてまだ掴みきれていない部分も多くある。無気力そうに見えて意外と話すし、仲のいい男子とはたまにふざけあったりもしている。しかしこうしてたまに突拍子もないことを言うのだ。今回も例に漏れず、彼が何のことについて言っているのか全く身に覚えがない。
「今日何の日か考えてみたら分かるかもね」
薄く笑いながら彼は言う。
今日？今日は2月14日で、期末考査1日前だが……。
「あ」
「思い出した？」
テスト期間が被っておりすっかり忘れていたがそういえば今日はバレンタインデーだっけ。
「バレンタイン？」
「そう」
でも、
「え、で？」
だから何だと言うのだろう。
「俺、甘党なんだよね」
「うん？そうなんだ」
そこまで言うと彼は先程までの余裕のある笑みからは一転、少し不機嫌そうな顔をする。
「え、もしかして私チョコねだられてる？」
「そう」
国見くんってそういうの欲しがるタイプなんだ……数とか部活の人と競ってたりするのかな、なんて事を考える。しかし、そもそも定期考査期間でバレンタインの存在など1ミリも覚えていなかった私は、生憎今日は何も持っていない。
「ごめん、テストで完全にバレンタインの存在忘れてて今日何も持ってない＿＿＿＿あ、でも待って！」
そこまで言いかけて私はカバンの中に常備しているアレの存在を思い出す。かばんをガサゴソと漁り、それを国見くんに差し出した。