検索窓
今日:7 hit、昨日:2 hit、合計:1,152 hit

人であった頃の…【伍】 ページ6

頭を下げた時、バタバタとはっきりとした足音が近付いてくる。縁側を踏みしめる音が聞こえる。

◻「はぁ…はぁ…、A様…!」

 鍛錬でもしていたのか、袴に染み込んだ汗がそれを物語る。まだ五つでありながら、立派に剣客としての道を進んでいる。曇りなき眼は燃えているようだ。

◻「父上から…聞きました。ここを離れると…」

 私がいることに気付いて、鍛錬場から走ってきたのだと言う。まだまだ子供だと言うのに、現実を理解しているのか。何も言わずに変えようと思ったが、そうもいかなくなった。

貴「…今後、ここに寄れるかは分からない。あっさりと死ぬか、しつこく生き残るか見当もつかない」

 黄色と赤の燃えるような髪をふわっと触り、頭を撫でる。現実を理解すると言うのは、残酷さも分かってしまう。少年は瞳を潤わせながらも、涙を流すことはなかった。こんな私に、任務の話や鬼の話を聞いてくるような好奇心旺盛な子だ。

貴「杏寿朗、私の話を聞いてほしい」

 煉獄殿に向いていた体を、立ったまま俯く杏寿朗の方へ向ける。座ったままでも同じ背丈で、これから大きく成長していくだろうと思うと口元が緩む。

◻「…はい!」

貴「君は、本当に素晴らしい両親に恵まれた。剣客としての才能も、人を想う心も、君にはあると思っている。ご両親から頂いたものも、自分が手に入れたものも大切にしなさい。私のようにはなってはいけない」

 自暴自棄になっている自覚はあった。ここで考え直して、落ち着き、鬼殺隊に留まる選択も間に合った。それでも、地獄行きを選んだ。自分も捨て、仲間も捨て、居場所も捨て、鬼を殺すことだけを求めた。杏寿朗には、仲間を大切にして、煉獄殿のような情熱を持って生きてほしい。私が望むことはそれだけだ。

◻「…俺は、父上を尊敬しています。でも、A様からも学ぶことが多くあります!これからも、先に生きる者として……俺は…」

貴「君は優しい子だ。君のような子がいる煉獄殿が羨ましい。……私は、母となることはできないから」


============

 ここからガラリと舞台が変わります。

設定【弍】→←人であった頃の…【肆】



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (1 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
設定タグ:鬼滅の刃 , 嘴平 , 煉獄
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:かんなぎ | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2020年11月3日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。