対 謎の鬼【壱】 冨岡義勇目線 ページ15
確実に、頸を取ったと思っていた。鬼は術を展開した時点で油断し、次の動きに入る準備も出来ていなかった。隙だらけの頸を目掛けて突いた、だが弾かれた。飾りのように腰に下げていた刀を抜いた途端、存在が変わったように空気が変わった。構えて鬼を見ているだけで体が重く、刀を握る手の力も入りにくい。
鬼「瞬きすらさせんぞ。水の柱よ」
構えも、立ち姿も、長きに渡り剣術を磨いてきた者に違いない。そして最も妙なのは、鬼の握る刀が日輪刀であること。どの流派かも分からない墨色のような…鈍く輝く刀身をしている。殺した鬼殺隊士から奪い取ったものなのか、それとも元から持っていたのか。
鬼「スゥー… "�遒慮撞� 弐ノ型…」
静かで短い呼吸。一気に火力を出す技ではないことは分かる。�遒慮撞曚覆瓢愼扈颪砲盧椶辰討い覆ぁ∧垢い燭海箸發覆じ撞曄�
義「…"水の呼吸 拾ノ型 生生流転"」
この系統の鬼は、早急に片をつけなければ予測の範疇を超える動きに出る。一撃目は流される、二撃目は僅かに頸を掠めたが避けられる、間合いを詰めた三撃目、鬼の肩から胸まで刀が届く…
鬼「闇雲・無音斬り"」
手応えはあった。肉を斬った感触は残っているのに、鬼は後ろに立っている。空気の揺れも、気配も、何も感じられなかった。遅れてやってくる脇腹の痛み、音もなく…いつ斬られたのかも分からず、感じた危機に体が勝手に動く。距離を取る、間合いに入られるには余裕がある程度の。…数は浅い、だが出血が多い。ぐっ…と、傷口を手で覆う。
鬼「……ほう、もう少し深く斬ってやろうと思ったがズレたか。お前が肩を抉ったから」
鬼の傷は既に再生しており、何事もなかったかのようにこちらを見ている。瞳には何も刻まれておらず、十二鬼月ではない。だが、今の動きは下弦の鬼など比べるに足らず。報告にあった謎の鬼に違いない。
義「……十二鬼月ではないのか」
鬼「…………」
鬼は何も言わない。動かない表情のまま刀をしまい、倒れる隊士達を一瞥する。
鬼「…名を聞こう。私は黒霧、上弦に準ずる者だ」
上弦と肩を並べるほどの鬼。鬼の事情など知ったことではないが、鬼殺隊の大きな脅威になり得る。ここで仕留めなければ多くの人間が喰われ、更に力をつけることになる。上弦は柱三人分の力を持つと聞く。ここで死んでも、運良く生き残ったとしても…。
鬼「名乗れと言っている」
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