対 水の柱【弍】 ページ14
まさか柱が足を運ぶとは想定外だ。十二鬼月が柱を殺すところは何度も見たが、こうして一対一になった経験はない。あしらって逃げるとしよう。
貴「(柱とは、あまり武を交えたくないな)」
手を前に突き出す構えをとる。水の呼吸は変幻自在な歩法で、如何なる敵にも対応できると聞く。小細工は通じないだろうが、引く時間は作れるか?
貴「"晦冥・攻ノ型"」
再び霧を散らし、柱の体を霧に隠す。見えている、刀を構えたまま周囲を警戒するその様が。柱とて人間、視界が闇に覆われれば精神は安定しにくくなる。
霧を鎌のような形に変え、上下左右から柱を襲う。柱が使い物にならなくなれば無残様もお喜びに…
◻「"水の呼吸 拾壱ノ型 凪"」
瞬き一つの刹那、攻撃が全て塞がれた。明らかに雰囲気が変わり、張り詰めた空気の中から刀が飛び出してくる。激流のように速く、そして正確な突きだ。頸に届くまで一秒もない、柱を人間と同じ括りとして…捕食される側と見るのは誤りだったか。
貴「スゥー……」
◻「…!」
腰の刀に手をかけ、居合のように切り出す。頸に当たるはずの刀身を頸に当たる寸前で止め、そのまま鬼特有の怪力で弾き返す。刀に負荷がかかると瞬時に察したのか、自分から引いたようにも見える。
貴「私に刀を抜かせるとは…どうやら、私はお前のことを甘く見過ぎていたようだ」
敵に対して刀を抜いたのは何年振りだろうか。指南を受ける時以外は鞘に収めたまま使わず、簡易な血鬼術だけであしらってきた。だが、それが通じず反撃までされては遊んでいるわけにもいかない。刀ごと腕を斬り落とし、五体満足では済まさない。
貴「瞬きすらさせんぞ。水の柱よ」
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《作者の独り言》
◾水の呼吸についてはWikipediaから引用しました
◾"血鬼術 晦冥"
霧を周囲に漂わせることが基盤となる術。霧を自在に操り、攻守共優れた機能性を持つ。欠点として、攻の威力と防の威力が低い。比較的よく使う。
◾「()」での表現は心の中で考えていること、という認識でお願いします(今更)
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