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対 水の柱【壱】 ページ13

〜大正○年〜本編開始時

 深く、暗く、静かな夜だ。月は隠れ、僅かな光も届かない漆黒。街の灯りは、今は色街にしかない。鬼狩りを含め、人間が夜に目が利かず月明かりで周囲を注視する。提灯を持っていようと、そんな気休め程度の灯りは無意味だ。むしろ、ここにいるということを鬼に伝えているだけで格好の餌食だ。それに合わせるように鬼狩りの警戒も高まるが、死亡率は格段に上がる。自ら死にに来ているようなものだ。

貴「(この夜が、自然の罠とも知らずに)」

 僅かに足音が聞こえる。それも複数、統制の執れた動きをしている。階級の高い隊士が部隊を指揮しているのか、僅かに揺れる空気から察するに無駄がない。

隊「かかれッ!!」

 四方八方から鬼狩り達が現れ、それぞれが決められた場所に向けて刀を振るう。頸、胴、腕、腹、脚、こうも執拗に動き方を組んでいると言うことは、私は鬼狩りの中でも名が知れてしまったらしい。

貴「……"血鬼術 晦冥"」

 ブワリと、血の色をした濃霧で辺りを満たす。鬼狩り共の視界は奪ったが、私は全て見えている。何処から攻撃が来るか分からない恐怖、仲間は無事なのか分からない不安、どれもこれも顔に焦りが出ている。

貴「ふん…未熟者共め」

 手首を捻ると霧が針のように変化し、鬼狩りの身体中に突き刺さる。内部まで侵攻するほどの凶器ではないが、神経を傷付け麻痺させる。四肢も動かず、呼吸もままならない、雑魚処理はこれで充分だ。

隊「あがっ…!はっ…はっ…」

 動きは悪くなかった。だが、初めて見るような術だったのだ。広範囲を一度に片付けられ、しかし生かされている。他の鬼は容赦なく人間を殺し喰うのだが、相変わらず私は生温い意思があった。無残様の手を煩わせても変わらない、いつまで経っても成長しない、いつか喰われることが……唯一お役に立てる時だ。

貴「(…この気配)」ピクッ

 嫌な気配を感じる。近付いて来る。他の鬼狩り達とは違う、洗練された剣気と妙なほど静かな気迫だ。
 
◻「"水の呼吸 捌ノ型 滝壺"」

 水の音、僅かに聞こえる呼吸音……一歩下がる。揺れる空気と視界に入る鋼の輝き、その鋼は目の前を下り地を斬る。同時に、滝のような飛沫が足元から爆発する。霧散していた血鬼術も掻き消された。無駄のない動き、乱れぬ呼吸、この男は間違いなく…

貴「…お前、水の柱か」

対 水の柱【弍】→←狩場【参】



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作者名:かんなぎ | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2020年11月3日 16時

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