狩場【参】 ページ12
完全に夜が明けた。あの隊士も、動かす止血をすれば死なずに済むだろう。偶然通りがかった人間に助けられるかもしれない、口から吐く血の量から見て、臓器の一つ二つが破裂したほどだ。
貴「(日の光が面倒だ…。鳴女を使うか…)」
隊「フゥー…!ハッ…フゥー…!!」
驚愕した。あの傷を負ってなお、無くなった腕と折れた足でこちらに這ってくる。折れた刀を咥え、今にも死にそうな真っ青な顔だ。私が知っている鬼狩りは、あぁも根性があったことはない。死んでも構わないのか、助かる命を捨てるのか、痛覚は死んだのか、様々な疑念が渦巻く。もう、足元まで来ている。
隊「フゥー…!」
今生死にそうな顔のくせに、眼だけはこちらを向けて逸らさない。首の力だけで刀を振るには、この隊士には筋力が足りない。根性だけでここまでのし上がってきたようだが、強い鬼との実力差までは計れなかったか。ここで殺してしまおうか?
貴「…集中しろ。呼吸の精度を高め、止血をしろ」
隊「…ッ!?」
貴「なんだ、やり方を知らんのか。ならば真似をしろ。上手くいけば死なずに済む。しつこく生きろ」
体が、どのように息をすればいいのかを理解している。一定の感覚、吸う量、吐くタイミング、この呼吸をすることで身体能力が飛躍的に上がることも知っている。何処で覚えたのかは分からない、使えるものは使おうと…そう思っているだけだ。
隊「…フゥー…フゥー…スゥッ…」
貴「力を込めろ。私の真似をすればいい。何も考えず意識を研ぎ澄ませ、血を外に流すな」
鬼狩りとしての未来は潰えたが、センスはあった。明らかに流血が減り、このまま続ければ死なない、それまでに増援が来る。間に合う、私は殺していない。
貴「(あぁ…無惨様、やはり私は出来損ないだ)」
ベンッと、背後に笹間が現れる。戻って来いとの御用達だろう。あの方は感覚的に、私が失態を犯 したことを察しておられる。お怒りを買うのは当然か…
貴「申し訳ありません… 首魁様……」
ベンッ……
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《作者の独り言》
モブ隊士弱いみたいな扱いされてますけど、中には根性ある人も絶対いると思うんです…!(願望)
甲とか乙とかの人ってどれくらいいるんでしょうね
前置きが想像より長くなってしまった…!
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