人であった頃の…【壱】 ページ2
〜明治○○年/当時17歳〜産屋敷邸にて
爽やかで、まだ少し冷たい風が吹く春の始まりだった。親方様が柱合会議を開かれる際、若輩者である私が柱となったことをご紹介してくださるようだ。
貴「柱の皆様、本日より柱として仲間入りさせていただく…神剣城Aと申します。お館様のご期待に応えられるよう、皆様のお力になれるよう尽力してまいります」
先達の柱達が親方様の前で正座をしている中で、私だけがそのまま深々と頭を下げた。鬼殺隊に入隊してから3年余り、家門の使命に従い鬼を狩り続けた故に柱にまで登り詰めた。柱を多く輩出してきた家門だけあり重圧はあったが、漸く鬼狩りとして堂々と胸を張れるようになった。
◻「Aが頑張っていることは、入隊当初から聞いているよ。努力を惜しまないことも……期待しているよ」
貴「有り難きお言葉でございます」
お館様は、誰に対してもお優しく慈悲で溢れている。鬼の首領を殺す事が産屋敷一族の悲願であることは何度も聞いてきたが、こうして直接声や話し方を聞くとしっくりとこない。……これほど温かいお言葉をかて下さるこの方が、命を奪わねばと思う鬼はどれほどの人間を貪っているのだろう?
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貴「お邪魔できません。私のような堅物が、炎柱殿のご家族とお会いしても悪影響です」
◻「いいからついて来い。お前は頭が硬すぎる」
炎柱殿は人柄も良く、鬼狩りとしても一目置かれる存在だ。鬼を狩った総数も、私とでは比べ物にならないだろう。何より、情熱がある。家のしきたりで入隊し、自分の意志も無く頸を落とす私とは違う。
貴「……幼いお子さんもいると聞いております。私などが現れては、嫌な気分になってしまいます」
と、言って何回も断り続けて来た。だが、私が狂ったように任務に向かう姿を見て呆れたのだろう。今日死んでも、明日死んでもいいと思いながら鬼を狩る姿は滑稽だったのかもしれない。私個人が守りたいと思う者もいないのに、高い志を持つなどできない。
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