001.「お兄さん大丈夫ですか?」 ページ3
会社を辞めて一週間。
無職になった俺は此の一週間、職探しに奮闘していた。
だがそんな都合良く見つかる訳でも無く、ひと息つこうと鶴見川の河川敷辺りを散歩していた。
そして川丘の方まで歩いていくと、場にそぐわない物体が或る。
「………人、か?」
だんだんと近付いて行くと人間が横たわっていて、動かない。
何だか面倒臭い場面に直面にした、と気付いた頃には足が勝手に前を歩く。
程無くして横たわっている人間の元まで行くと、砂色の外套を着た同い年ぐらいの男だった。
全身ずぶ濡れで顔色も悪い。
予測するに何らかの原因で川に流され、此の丘まで流れ着いたのだろうか。
川に転倒して溺れて気を失い、其の儘流れ着いた、と云うのが自然だろう。
ーーー目の前に人が死んでいるかもしれない場面で、冷静に分析している自分が末恐ろしくも思えた。
一先ず、此の儘放っておく事も出来ないので、傷病者に語り掛け反応があるかを確認する。
「もしもし、お兄さん大丈夫ですか?」
肩を叩き、三回呼び掛ける。反応は無い。
本来此処で救急車を呼ぶべきなのだろうが、其れをしなかったのは携帯電話を出した俺の手が止まったからだ。
「……ちっ。またお前かよ」
電話しようとした俺の手を抑えるのは、俺の異能のーーー『椿姫』だった。
身なりは俺と同じ顔を持つ女型で、俺の意思とは関係無く勝手に動き回る事があり、今まさに
だがこっちが語り掛けても、喋りは出来ないらしく大方頸を振ったりジェスチャーしたり、
ーーーあくまで何もしなければ、だが。
只今、人命救助しようとしている俺の邪魔をする意図は判らないが、此奴に構って目の前の傷病者が時既に遅し、などの状況になってしまうと此の後が面倒な事に成り兼ね無いので、続けて手で顎の先を上げて気道を確保。息が有るのかを確認する。
鼻と口からは息が無い。胸、腹の上がり下がりも無し。となると人工呼吸が必要だ。
此処で本来ならば躊躇無く人工呼吸を施す場面なのだが、先日の事件が脳裏をよぎり手が止まってしまう。
其処で『椿姫』が俺の手を掴み、頸を振る。代わりに人工呼吸しようとしているのが伺えた。
お前そんな事も出来るのか、と感心しつつ何故か何時もより押しが強い椿姫に場所を譲り、傍観した。
椿姫が傷病者の顎を触れた瞬間。
ーーー椿姫が『消えた』。
「………は?」
002.「君、名前は?」→←000.《設定》*イメージ画アリ
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作者名:澪 | 作成日時:2016年6月12日 11時